大仏殿地鎮祭、吉野花見の歌会、田辺城の籠城
――本書の続きを書く構想はありますか。
武川:書きたいんです。構想はいろいろとあるんですが、書きたいことのひとつは、秀吉が大仏殿を建てるときの地鎮祭を在昌が任されているんですね。土御門家はそのころ中央にいられなくなっていて……秀吉は陰陽師弾圧をしたと言われることもありますが、実際は土御門久脩が排斥されたのは秀次事件に連座してのことです。秀吉と陰陽道のつながりはそれなりにあった。そのあたりを書きたいですね。
もうひとつは、秀吉晩年の吉野の花見です。そこで歌会が開かれていて、徳川家康、伊達政宗などの大名が全員そろって歌会をやっていた。幽斎(藤孝)ももちろん参加しているのですが、その場でちょっとした怪異が起きたりもしていて、そこを書きたい……あとは藤孝が籠城した田辺城の戦いも絶対に書かなきゃ! 関ヶ原の戦いがはじまり田辺城に籠った幽斎は、西軍を相手に絶体絶命の窮地に陥ったのですが、歌道の弟子である中院通勝たちが、幽斎が死んでは古今伝授が途絶えてしまうと、後陽成天皇の命を携えて慌てて駆けつけた。あのシーンも全部書きたいです。
――さらに長いスパンで、武川さんが作家として書きたいテーマはありますか。
武川:今はぼんやりとですが、全編合戦の小説を書きたいと思っています。まだ全然話になっていないけれど、最初から最後まで戦っている話で、ヒロイックではなく陰惨なものにしたい――戦国時代を書いていながらリアルな戦争を書かないのは、私にとっては嘘だという気持ちがどうしてもあるんですね。具体的には朝鮮出兵の撤退戦を書きたいと思っています。
武川佑(たけかわゆう)
1981年、神奈川県生まれ。書店員、専門紙記者を経て、2017年、甲斐武田氏を描いた書き下ろし長編『虎の牙』でデビュー。同作で、歴史時代作家クラブ賞新人賞、21年『千里をゆけ くじ引き将軍と隻腕女』(文庫化にあたり『悪将軍暗殺』に改題)で日本歴史時代作家協会賞作品賞、25年『円かなる大地』で大藪春彦賞を受賞。その他の著作に、『落梅の賦』『かすてぼうろ 越前台所衆於くらの覚書』『龍と謙信』などがある。
