6/7ページ目
この記事を1ページ目から読む
歯は4本折れ、手足も骨折し…
車に撥ねられた時の記憶はないが、意識が戻ると、救急隊員から「服をはさみで切ってもいいですか」と聞かれた。痛みのため、まともに話をすることができなかった。携帯電話を救急隊員に渡し、家族に電話して事故のことを伝えるよう頼んだ。
搬送後の病院で家族が撮影した写真がある。石川は仰向けの状態で首を固定されて目を閉じていた。顔面のあちこちの皮膚が腫れ上がり、一部は剝がれて赤くなっていた。歯も四本折れ、手足も骨折し、包帯でぐるぐる巻きになっていた。
脊髄も損傷し、診断書は〈約三か月の加療を要する〉と結論づけていた。石川は「命に別状はない」という診断だったが、死を覚悟したという。警察発表や報道で「重傷」「軽傷」という言葉が使われるが、それだけでは実態が伝わらない。「軽傷」は全治三〇日未満だが、靭帯損傷など長期治療が必要な場合があり、全治三〇日以上の「重傷」も重い後遺症が残る場合がある。
再びドラレコの映像に戻る。時刻は〇時二三分三三秒、暴走から七秒目。次の交差点まで、約七四メートルの直線上に先行車はない。妻は「ああっ」、飯塚は「あー」、車内に悲鳴が響く。
暴走から八秒目。江古田二又からサンシャインシティ南を結ぶ国際興業バスの路線「池〇七系統」の停留所「豊島区役所」の前を瞬時に通過する。バス待ちの客はいない。
