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暴走から九秒目。右車線で黒のプリウスが信号待ちをしていた。この車のサイドミラーに飯塚の車が映る。しかし、ドライバーの男性が気づくか気づかない間に、飯塚の車は時速八四キロメートルから九六キロメートル近くに到達する。
「日出町第二公園交差点」の横断歩道が眼前に迫る。ここは「第二現場」と呼ばれている。
「もうどうしようもない!」
飯塚が声を震わせる。
「あー、どうしたんだろう」
妻が「どうしたの!」と金切り声を上げる。暴走から一〇秒目。その瞬間、ドラレコ画面の右から何かがフレームインする。飯塚は危険を感じつつ、絶望的な気持ちでブレーキを踏み込んだという。
――ダメだ! もうどうしようもない! 間に合わない!
異変を感じてからここまでの距離は約二五〇メートル。
第一現場からその様子を見ていた野口は、こう証言した。
「何かが飛んだんです」
「何かが飛んだんです。何かが。そのときは、よくわからなかったのですが……」
こんな悲劇は、絶対に繰り返してはいけない――。そう心の底から願う人々の記録が本書だ。