安田 そもそも沖縄と本土では、世論の左右の軸の「真ん中」が違います。令和の日本本土基準の「真ん中」から、たぶん30%くらい左側にスライドした場所に沖縄世論の「真ん中」がある。なので、沖縄では本土よりも左派が元気ですし、現地の新聞や学術関係者も、本土から見ればかなり「左」の意見を言いがちです。でも、これ自体は理解すべきことで、本土の価値観だけで断じてはいけないと思うのですよね。
この理由はいろいろあるはずですが、最大のものは米軍基地でしょう。沖縄に基地が大量にあるのは、1945年3月からの沖縄戦の地上戦の後、米軍が占領した土地がそのまま基地になったり、1972年までの米国統治下で基地が拡張・新設されたりした結果です。そして沖縄返還の際にも、それが十分に是正されなかった。
もちろん、日本国家の安全保障という大文字の理屈で、「それは仕方ない」と説明することはできます。日本政府は補助金やさまざまな特例措置も講じています。でも、難しい話を措いた生活者感覚としては、別に左派の考えを持つ人じゃなくても基地は「うざい」でしょう。補助金だって、ゼネコンや一部の出入り業者は儲かっても、一般人がどこまで潤うのかは別の話です。
今年、沖縄に5回くらい取材で行く羽目になり、観光客目線をなくした状態で現地にいると、この感覚は私ですら覚えるわけです。普通に道路を走っていて、米軍のYナンバー車両と事故ると面倒。基地を迂回して道路や街が作られているので、地図上ではすぐの場所に迂回しなければならなかったり、イレギュラーな形の交差点があったりしてムカつく。飛行機がうるさい。米兵がゴミをポイ捨てしたりマリファナ吸ったり調子乗んな、とか。米軍がひいては自分自身の安全を守る抑止力だと知っていても、です。
これは本来、イデオロギーじゃないですし、中国の工作とも関係がない。生活感覚として「うざい」という反基地感情です。でも、それは結果的に左派の主張と相性がいい。ですから当然、沖縄の左派は本土よりも強くなります。
──なるほど。
安田 あともう一つ。沖縄の社会は、いろんな意味で本土の平成初期が残存していると感じます。大量にヤンキーがいて、いまだに国道を改造バイクで爆走している。ヤクザも存在感があります。本土だと暴力団は完全にアンタッチャブルな存在ですが、沖縄だと感覚的にもう少し身近です。これは現地でヤクザ取材もやった実感からの感想ですが。で、これらとは個々の事情は違うかもしれませんが、「左翼」も元気だと。
平成初期の日本本土って、ヤンキーもヤクザも左翼も超元気でしたよね。あの社会がそのまま維持されている。そう考えると、沖縄で左派世論が強い理由について、別の補助線を引ける気がします。
「スパイだ!」は有害である
──うなずける気はしますが、沖縄で「平成初期」が維持されているのはなぜだと思いますか?
