学ランを身に付けて記念写真「似合ってる。カッコいいよ」

 そして学校からは自宅に何度か連絡が入り、結論として1番目のお願いの通りに受け入れますという返事が来た。完全に男子として扱うので、もちろん制服も学ラン。トイレは校舎の奥にほとんど誰も使っていないトイレがあるので、そこを男女兼用として光に使ってもらうということになった。

 そうか。そうなるのか。光は男になるのか。私は、光の性別違和に対して可能な限りサポートしてやろうと思いながら、女性性を失う寂しさも感じていたことを初めて思い知らされた。

 自宅に学ランが届いた。光は早速学ランを身につけた。妻がうれしそうに言う。

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「似合ってる。カッコいいよ」

写真はイメージ ©AFLO

 私は「記念に写真を撮ろうよ」と光に声をかけた。光は写真を撮られることが嫌いでいつも断られる。でもこのときは「いいよ」と言ってくれた。

 ファインダーに光を収め、何枚もシャッターを切った。うれしそうに、はにかむように、表情を緩める光。確かに私は似合っていると思ったし、カッコいいと思った。と同時に光の笑顔の中に不安定さのようなもの、あるいは危ういものがんでいるような感覚になぜか囚われた。私は、自分のそういった直感みたいなものが杞憂に終わればいいなと心中願った。

卒業式でのカミングアウト

 小学校の卒業式の日がやってきた。卒業生は私服で参加する子と、これから行く中学校の制服を着て行く子が半々だった。光は中学校の学ランを着て行くという。私は妻と一緒に参加した。卒業証書を受け取り、式の終了時には列になって式場を一周して退場していく。

 光は仲間たちに男としてすでに受け入れられていたが、さすがに学ラン姿で卒業式に来るとは思っていなかっただろう。また保護者の目もある。これはある意味でのカミングアウトだ。光の堂々とした姿を見ながら、私は緊張していた。「人からどう見られるかは関係ない、自分の生き方を生きなさい」と、私は光が幼い頃から言っていた。でも、私は人の目を気にしていた。なんてダメな親なんだと私は自分が情けなかった。

次の記事に続く 「ボクだけ全然体つきが違うんだよ」胸が目立つためベストを脱げず…小児外科医の父が見た、男子になった我が子の「不安だらけの中学生活」