精神論が多いと思うかもしれない。しかし、科学的に説明することはできる。精神的なことは自律神経の状態に直結し、免疫機能にも大きく関わる。後の章で説明するが、自律神経機能を示す心拍変動(HRV)は、がんの発生や予後に関係することがすでに証明されている。がんと診断された患者さんのほとんどは診断される前の数年に大きなストレスを抱えている。仕事のストレス、家族の問題、経済的な問題など、これらは誰もが常にさらされている一般的なものだが、それらが複合的に合わさって「特にこの数年が辛かったんです」、「睡眠時間も減って、運動する時間も取れず」、「食べるものにも気を遣えませんでした」、というように特に大変な時期を過ごしている方が多い。こういう時には自律神経機能が極めて弱って、免疫も働かない。
「治療法は自分で決める」、「直感に従う」、「より前向きに生きる」、このような意識が働かないと自分の生活をより良いものに改めたり、予防や治療に対して前向きに取り組んだりすることは困難であろう。「抑圧された感情を解き放つ」、「周囲の人の支えを受け入れる」、「自分の魂と深くつながる」、「どうしても生きたい理由を持つ」、日本人には馴染みがないこともあるが、要するにこれらはストレスマネジメントの重要性を説明している。大きなストレスで押しつぶされそうになっている時に、周りからのサポートでスッと楽になった経験があるかもしれない。その時、同時に自律神経機能も改善している。
「抜本的に食事を変える」、これは、毎日食べているものが自分のからだを作っていることを考えれば当たり前のことである。高血圧や脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が食事の影響を強く受けていることは誰でも知っている。がんの場合も同様だが、からだの環境の個人差があるし、その時の病状によっても違う。そのため、万人に対する推奨を示すガイドラインでは、「低栄養にならないようにバランスよく食べましょう」という程度の説明になる。本来は、その人の状態を評価して、がんの状態・代謝の観点から検討すきことであろう。また、「ハーブとサプリメントの力を借りる」、これもガイドラインでは推奨されない項目である。なぜなら、とるべきハーブやサプリメントは人によって大きく異なるからだ。からだの環境を評価して、その時に必要なものが食事で取りにくい場合にはハーブやサプリメントをとることは大きな助けになるだろう。
注意すべき点は、これらは因果関係が証明されたものではなく、治療の代わりになるものではないということである。ただし、がんの治療や予防に向き合ううえで大きなヒントを与えてくれる。
標準治療に加えて体内環境を整えるということ
ここで強調したいのは、こうした事例を「特別な人だけに起こった例外」と捉えるのではなく、様々な生活の変化が体内環境の変化につながり、それが良い結果を生む可能性があるということである。すべての人に当てはまるわけではないし、体内環境を整えれば必ず良くなるという単純な話でもない。しかし、からだの環境を上手に改善できた人たちの中に、がんの勢いが弱まり進行が緩やかになったり、治療反応が良好となるケースを度々経験する。
