ジャニー喜多川氏の性加害問題について報じ続けた元「週刊文春」記者の髙橋大介氏による連載「Voices」が7月にスタート。33週に及んだ「週刊文春」ジャニーズ問題キャンペーン報道の裏側が明かされる。

 BBCが放送した、ジャニー喜多川によるジュニアへの性虐待についてのドキュメンタリー。当時の「週刊文春」編集長はBBCの放送は大きな展開を生むと考え、すぐさま取材班を組んだ。(初出「週刊文春」2026年7月16日号、前後編の後編/前編を読む

BBC取材班の驚き

 早速、編集部で取材班が組まれた。文春では原稿の執筆と取材班のとりまとめを担当する記者を「カキ」、取材に専念する記者を「アシ」と呼ぶ。芸能取材がメインで、ジャニーズ関連記事を担当することが多かった私がカキを任された。よくジャニーズの記事を一緒に取材していた遠藤遥(仮名)、オンラインメディアから転職してきたばかりの西山里緒がアシとなった。週によっては増員されたが、この3人が中核となった。遠藤は突破力に優れており、編集長の加藤は取材協力者、証言者へのケアが細やかであることも評価していた。西山は週刊誌のスタイルにはまだ慣れていなかったが、留学経験があり、英語が堪能だ。BBCとのやり取りに打ってつけだった。

 次の号はイギリスで放送された番組の内容を詳報し、BBC取材班に話を聞いて構成することになった。

 ディレクターのメグミ・インマンは父がイギリス人で母が日本人。小4から中3まで日本に住んでいたこともあり、日本語を話すことができ、SMAPやTOKIO、嵐のことは当時から知っていた。だが取材者としてジャニーズ事務所に向き合うと、彼女はその異様さに驚いたと話す。

ADVERTISEMENT

「何度も取材をしたいとコンタクトしました。しかし、取材には応じられないという返事でした。日本のエンターテインメント界でここまで力を持ち、大きな会社が取材を受けないということにとても驚きました」

 国際基準に照らし合わせれば当然そうだろう。だが、ジャニーズ事務所の場合、「回答無し」はむしろスタンダードなのだ。多くのメディアはジャニーズ事務所のタレントに登場して貰うために、スキャンダルを扱うことはほとんどない。一方、文春などの批判的なメディアの質問には答えないことが多かった。TOKIOの元メンバー・山口達也の未成年少女に対する強制わいせつ事件では、山口の会見に行った文春記者が会見場に入れず、別室でモニター越しに見るように言われたこともある。

BBCの取材に答えるハヤシ氏(BBC番組より)

 私は一番訊きたいことをZoomの画面越しに訊いた。元ジュニアにはどうやって取材に応じてもらったのか。するとインマンはこう答えた。

「我々BBCは日本の芸能界とは何も接点がない。アウトサイダーの立場だから、彼らに危害が及ぶこともないと説得しました」

 レポーターのモビーン・アザーも似たことを言う。

「日本人に話すより話しやすかったかもしれません。日本語が話せないことは、結果的に役に立ちました」

 外国メディアだからハードルが下がったという。つまり、日本メディアで、日本人相手に話すとなると、心理的な障壁が高まるのだろう。

 だが続報を出すとなれば、我々も被害を訴える元ジュニアへの取材を取り付けないわけにはいかない。

 まずは、番組に出ていた元ジュニア3人を探した。