手法は「完黙」だけじゃない
作中では九条の「完黙」の指示に従った依頼者が次々に釈放、不起訴を勝ち取っていく。上野氏は「完黙」指示にとどまらず他の手法も駆使するという。
「最近は取り調べ自体を拒否することが刑事弁護業界で盛んになっています。逮捕されて留置場に収容されると、取り調べのために警察が呼びに来る。その時に『行きません』って言わせるんですよ。これは弁護士の指示が大半ですが、本人が自発的にやる場合もあります」
一体、どういうことか。
「黙秘を継続させることはなかなか難しい。実際、取り調べ室まで行くと、警察はあの手この手使って、強引な手法で喋らせようとしてくる。黙秘権を確実に行使するためには、もう取り調べ自体を拒否したほうがいい。無理やり取り調べに行かせたり、衣服の差し入れを禁止したりする場合には、警察署長や担当者宛に抗議文を出します」
「被疑者ノート」で違法捜査のチェック
作中では、弁護人が被疑者に持たせる「被疑者ノート」なるものが登場する。
被疑者が取り調べの内容や日々の出来事を書き留め、自白の強要など、警察による不当な取り調べを牽制する狙いがある。
「被疑者ノートは最初の接見の際に必ず渡しています。違法捜査のチェックがしやすくなりますし、留置施設の中での不満や不安を書き込むことができ、依頼者の心情も少しは楽になるはずですので」
一方ドラマでは、大物ヤクザである依頼者が、組織の構成員に連絡するため接見時に携帯電話を貸し出すよう九条に要求する場面があるが、実際はどうか。
「接見時の携帯の貸し出しは懲戒事案ですし、弁護士のほとんどがやっていないと思います」
リアル刑事弁護士の上野氏は、どんな事件を担当してきたのか。
たとえば海外にいる友人に頼まれ、麻薬が入っている郵便物を軽い気持ちで受け取ってしまい、麻薬及び向精神薬取締法違反で逮捕・起訴されたケース。営利目的の麻薬密輸事件は重罪であり、同種の事案では実刑判決が下されることがほとんどだという。
「依頼者には、幼いお子さんがいて、実刑になったら家庭が崩壊してしまう状況だった。依頼者が密輸による利益を全く得ていない証拠を積みあげ、裁判官に減刑を求めました。結果、同種の事案では極めて稀な執行猶予付き判決を得ました」

