反社会勢力との「黒い接点」は?

 やはり気になるのは、ヤクザや反社会勢力との日常的な“黒い接点”だ。

「95%以上が一般の普通の社会生活を送っている方ですよ。犯罪集団の弁護もしたことはありますが、割合としては多くないです」

 だが、その残り5%には、近年凶悪事件を相次いで起こしているトクリュウ(=匿名・流動型犯罪グループ)が含まれるという。

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「詳細は明かせませんが、日本を騒がせた広域強盗集団や日本最大級のスカウトグループのメンバーの弁護を担当したことがあります。有名な反社集団の幹部が私を訪ねてきたこともありますね」

 九条弁護士には、反グレのリーダー・壬生憲剛(みぶけんご)(町田啓太)の仲介で、壬生の手下などが起こしたひき逃げや薬物売買の弁護依頼が次々と舞い込んでくる。

「壬生みたいな、裏社会の仲介人はいません。基本は単発の依頼を請け負っています」

大物刑事弁護人との出会い

 上野氏には刑事弁護士を目指すきっかけとなった大学時代の原体験がある。それは、介護殺人事件の裁判傍聴だ。

「長年介護していた母親を殺害した被告人に同情が集まるなか、担当弁護士が頼りなくて被告人の無念を代弁できていない姿に憤りを感じたのです。きちんとした弁護活動があれば、この被告人は救われたはずだと強く感じ、刑事弁護の道を志すきっかけになりました」

 大学院卒業後に司法試験に合格。司法修習生を経て、刑事弁護の泰斗として知られる高野隆弁護士の法律事務所の門を叩いた。

高野弁護士 ©時事通信社

「当時、高野事務所はアソシエイトを募集していなかったのですが、しつこく高野先生を口説きました。名だたる刑事弁護士が集う忘年会の場で、高野先生に『一緒に働かせてください』と、半ば断れないようにして入所を認めてもらったんです(笑)。高野先生は事務所を工事して個室まで用意してくださいました」

 高野氏といえば、オウム真理教事件をはじめ、近年ではカルロス・ゴーン事件や大川原化工機事件などを担当したことで知られる。

「高野先生は“検察側の証拠には全て不同意”といった弁護士業界のイメージとは異なり、事案ごとに依頼者の最善の利益を導き出すため緻密に戦略を練る柔軟な弁護士です。原則論にとらわれず、検察官と対話すべき場面では対話する。法廷での尋問技術には学ぶところが満載でした」

 高野弁護士のもとで7年間の研鑽を積んだ後、成功者の象徴とも言える六本木ヒルズに事務所を構えた。その裏には刑事弁護への思いがあった。

「本来、刑事弁護は弁護士なら誰もが手がけたい分野だと思います。しかし、現実は刑事弁護の専門家は少ない。それは儲からないからです。国選弁護の報酬なんて、どんなに一生懸命やっても10万円そこそこ。食ってはいけない。そのせいで、刑事弁護はボランティアに近いものがあり、優秀な若手が集まりにくく、質の低下が起きている。刑事弁護の専門家として生計を立てられるモデルを確立し、『良いオフィスで、良い報酬を得て、良い仕事をする』という新しい刑事弁護士像を目指しています」