「お前たちがこの施設に入り、国民は大喜びだ」
院には巨大な教会があり、3000人の収容者を前にしてイングンが説教を行った。そこで彼は「お前たちは人間のクズ」「社会に存在する価値がない」と言い続けた。
「お前たちがこの施設に入り、国民は大喜びだ。路上から浮浪者も飲んだくれも物乞いも消えたからな。路上は浄化された」
被害にあった生存者たちは「一番恐ろしかったのはパク・イングン」と口を揃える。
子どもたちを殴り、蹴り飛ばし…
彼の一言で収容者の生死が決まった。「神に代わりお前たちを罰する」と言いながら、黒い革の手袋をつけた拳で子どもたちを殴った。木刀で叩きのめしたり、蹴り飛ばしたりすることもあった。ケガをした子どもには、治療を許さなかった。薬代がもったいないからだ。
強制労働の収益は、すべて院長をはじめとするグループが搾取し、独占した。兄弟福祉院のPR映像には、収容者たちが出所した後の生活のために貯金する様子が映し出されていたが、実際に報酬が支払われたことは一度もなかったという。
敷地の一角にはパク・イングンの一族が住む豪邸があった。一族は豪奢な暮らしを満喫した。妻はいつもドレスを着用し、イングンの息子たちは気ままに収容者たちをいたぶった。
金庫で見つかった20億ウォン
兄弟福祉院の実態が露見したのは1986年のこと。近隣に赴任した地方検事が山で狩猟をしていたところ、偶然奇妙な光景を目撃した。兄弟福祉院の収容者たちが強制労働させられていた現場だった。
新聞記者たちも事件を追いはじめた。強制労働と暴行に関する記事が出て、世間は衝撃を受けた。強制捜査に踏み切った警察は、イングンの院長室にあった金庫から合計20億ウォンの日本円やドル札を発見する。今なら何百億ウォンにも相当するという。
これらは収容者から横領した金と、政府から得た金だった。収容した人数に応じて政府の助成金が得られる仕組みである。だから3万8000人もの人々を収容したのだ。

