手紙には「一種の先天的心臓疾患があることが判りました」と…

 同年4月30日付で、迪夫さん宛に書かれた手紙も同封されており、そこには「ご子息には明確な心房中隔欠損として知られている一種の先天的心臓疾患があることが判りました」「※先生に詳細な所見報告書を送付致して置きましたので何卒同先生をご訪問の上ご子息のご病気の治療方法についてご聴取下さい」(※は放影研が個人情報保護等の理由で伏せた部分)などと、つづられていた。

 この翌年には洋子さんも「全身検査」を受けており、その結果、子宮筋腫などが見つかっている。これに先立って作成された原爆に関する調査票には、「爆心地ヨリノ距離」が「2550」、「遮蔽ノ状態」の欄には「Inside a western style building with all the windows open」(窓をすべて開けた西洋風の建物の中にいた・筆者訳)と書かれていた。広島市宛の申請書類とも内容は符合する。

 先に述べたように、ABCCとその後身の放影研は出生時障害調査の後も、追跡調査を続けてきた。男女比(1948~62年)、染色体異常(67~85年)、血液たんぱく質の変異(75~85年)と多岐にわたり、死亡率とがん罹患率、DNA調査は現在も続けられている。

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 阿部さんが受けた検査は、どの調査に使われたのだろうか。放影研で遺伝学部長などを務めた中村典さんは、「染色体異常の検査に使われた可能性が高い」と推察する。「染色体の検査はいつも成功するとは限らないため、複数回にわたってABCCに呼ばれたとも考えられます」と、解説を加えた。

被爆二世だというアイデンティティを持っているワケ

 カルテに目を落としながら、阿部さんは言う。以前は、遺伝的影響に確信をもってはいなかったはずだが、「今は、関係していると思うんですよ」。彼の「淡々と」したイメージが揺らぐような感覚を覚えたので、以前にも聞いた質問を繰り返してみた。

「阿部さんって、ご自身が被爆二世だというアイデンティティはおもちですか」

「もってますね」

 即答だった。