「母親と赤ん坊、どちらかの命はあきらめないとうめません」医師の残酷な宣告

 5日かかる、大変な難産だった。妊娠中の体調不良で、すでに体力は落ち込んでいた。陣痛が弱く、分娩がなかなか進まないので、促進剤を打った。すると、何かが押し寄せてくるような人工的な痛みに襲われた。

「もうやめて!」と叫び、もだえ苦しむ早志さんを、実母は手の皮膚が剝けて血がにじむほどにさすり続けた。だが、医師は残酷にも宣告する。

「母親と赤ん坊、どちらかの命はあきらめないとうめません」

ADVERTISEMENT

 早志さんは迷わなかった。

「子どもを助けてください」

 私の命は、すでになかったようなもの。ここで命の継承を途絶えさせるわけには、いかなかったのだ。

写真はイメージ ©maruco/イメージマート

「うんでよかった」という感動に胸が満たされた

 そして、産声が響いた。「命はありますか、指はみなありますか」と矢継ぎ早に聞くと、「丸々とした、かわいらしい女の子ですよ」と返ってきた。

 小さくも肉づきのいいその腕には、やわらかなふくらみがいくつも連なっていて、頭にはうっすらと髪の毛も生えていた。3200グラムを超えるわが子と対面し、「うんでよかった」という感動に胸が満たされた。

 長女には心臓に異常があり、幼稚園や小学校では運動会への参加は控えさせていた。しかしその後は、心身ともに健やかに育ち、優しく、そして芯の強い女性になった。

 今は3人の孫もいるが、早志さんは長女や孫たちのことを「被爆二世」や「三世」だとは、意識したことがないという。

次の記事に続く 「子どもはつくらない」「障害のある子がうまれると怖い」15歳で被爆した女性の決断に医者が激怒…彼女の人生を変えた“医者からの衝撃的な一言”

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。