大都会の片隅に釣り堀があると聞いた。7年ぶりに東京メトロに乗り込み、通勤ラッシュに懐かしさを覚えながら赤坂を目指す。赤坂見附駅から地上に出ると、そこは永田町や日本の大企業のビルが立ち並ぶ政治経済の中心地。
四谷方面に歩いていくと、弁慶橋という港区と千代田区を隔てる橋に差し掛かる。横断途中で橋の下に目をやると、木々に囲まれひっそりと佇む建物が見えた。今回の目的地である「弁慶橋ボート場」だ。
創業78年を誇る老舗で、周辺の都市開発が進む前から存在する歴史ある釣り堀。なぜこんな立地に釣り堀があるのだろうか。そして何が釣れるのだろうか。謎に包まれた釣り堀を調査してみた。
江戸城の外濠がそのまま釣り堀に
弁慶橋を渡ると左側に下へと続く階段が現れる。降りて行くとそれまであった都会の喧騒が遮られた、のどかな水辺の風景が広がる。
そもそもなぜこの立地に釣り堀があるのだろうか。
遡ること約4世紀、江戸城(現:皇居)警護のため浅草から牛込、四谷、赤坂、汐留、虎ノ門、日比谷、神田をひとつなぎにした渦巻き状の外濠が建設された。濠の幅は広い場所で90mに及び、江戸城は日本一巨大な惣構えを誇っていた。
明治時代以降、都市開発のためにその多くが埋め立てられたが、赤坂から四谷に続く弁慶濠は埋め立てられることなく残存した。そこで弁慶橋ボート場の創業者である故小林義光氏が「都民の憩いの場になれば」という想いで当時の千代田区の許可を得てボート場を創業したという。
現在では濠に多くの魚が放流され桟橋で釣りができるほか、ボートフィッシングまで楽しめる釣り堀へと形を変えてきた。朝からお客さんを乗せたボートが次々と出艇していく。創業者の思いは継承されているように見受けられる。私も乗り遅れないように受付に向かった。


