髙橋 本書には戦前の広島や沖縄の穏やかな日常写真も多く収録されており、それはカラー化によって「とても良いもの」「豊かな暮らし」として鮮やかに映し出されます。

――しかし、その平和な風景が戦争によって破壊されてもいきます。

髙橋 はい。特に書籍の中盤では、十数カ所の空襲写真を見開きにまとめて掲載しています。空爆によって燃え上がる「火」の色。そのインパクトは、作業を終えた今でも脳裏に鮮明に焼き付いています。

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長崎原爆投下から20分後のキノコ雲
長崎原爆投下から20分後のキノコ雲

 当然ながら、東京や大阪といった大都市だけでなく、全国各地の都市がこれほどまでに酷く爆撃され、焼き尽くされたのだという事実は、決して忘れてはならないと強く思わされました。

終わりのない「記憶の色」の探求

――AIによる自動着色だけでなく、庭田さんや渡邉教授による手作業での補正や、戦争体験者へのヒアリングを通じた色の修正が行われています。制作過程での裏話があれば教えてください。

髙橋 このカラー化の作業には、実は明確なゴールが存在しないんです。

1945年8月15日。玉音放送をラジオで聴き、涙を流す日本軍の捕虜。グアムの収容所で撮影された写真

――「これで完全に完成した」と言い切るのが非常に難しいということでしょうか。

髙橋 そのとおりです。それにもかかわらず、著者のお二人は本当に妥協を許さず、指定された〆切の直前……というか、正直に言えば〆切を若干超えてしまうギリギリのタイミングまで、「もう少しこの色を調整したい」「ここの解像度を上げたい」と粘り続けて取り組んでいただきました。