「本気で自殺を考えるくらい自分のアイデンティティに悩んだ」

 差別の重荷は世代を経るごとに軽くなるものだから、孫の状況はもっとましだったと思っていた。彼が差別について語るのを直接聞いたことはないが、彼は『ニッケイ・エイジア』のインタビューのなかで、言葉によるいじめや身体的な虐待を受けていた子ども時代のことを語っている。「本気で自殺を考えるくらい自分のアイデンティティに悩んだ」という。

 クリシェ(ありがちな決まり文句)がクリシェになるのには理由がある。貧困と差別は孫正義を打ち砕くことなく、むしろ彼を強くした。地元に球団を所有し、日本一の富豪になり、「人々を幸せに」する原動力となったのだ。願わくは、彼も幸せになる人のひとりであってほしい。

 福岡からの帰路(修理を終えたバイパーで)、孫は口数が少なかった。父と息子で、ニケシュやソフトバンクの後継問題について話し合ったのだろうか。ひょっとすると孫シニアは、韓国人に代わってインド人が日本テック界最大手のかじ取りを担うという困難な課題を優秀な息子に意識させたのかもしれない。

次の記事に続く 「一緒に人類の未来を変えましょう」年俸50億円の“後継者”を辞任させた直後、孫正義が自身の右腕に伝えた“不気味な言葉”の真意とは