頭のなかは混乱するばかり

 どんな話になるのか、まったくわからなかった。ニケシュはああ言っていたが、孫は本当に私に残ってほしいのだろうか? 同じように、自分がここに残りたいのかどうかも確信がもてなかった。この数年は刺激的な日々だったが、こんなペースはずっとは続けられない。それにニケシュが去れば、私では猛獣を相手にするには力不足だ。物陰に潜むドラゴンたちはどうなる? 奴らはニケシュを攻撃したが、今度は私が標的になるのだろうか? それにニケシュは平気そうにしていたが、私が残るのは友人に対して不実な気がした。彼がもし不当に扱われたのだとしたら、なおさら。

 それでも、孫への愛情と尊敬は私の気持ちのなかで大きな位置を占めていた。力関係を考えればおかしな話だが、彼を守ってあげたいという保護本能も生まれていた。ニケシュとつくり上げたチームへの責任感もある。メンバーの多くとは師弟関係のようなものができていた。それに今回のことがニケシュにとって挫折なのはわかっているが、9桁の和解金〔退職費用は約88億円と報じられている〕を手にした彼は、次の仕事までこの状況を立派に乗り切っていくだろう。

ADVERTISEMENT

 頭のなかは混乱するばかりだった。私はジェリー・ヤン(編集部注:米ヤフー共同創業者)のキッチンでマックス(編集部注:PayPal共同創業者のマックス・レブチン)と交わした会話を思い出し、自分のなかの内なる「デュード(編集部注:あいつ)」を呼び出した。万物は流転する、ただ流れに身を任せるしかないときもある。私は何ひとつプランもないまま、孫の待つ会議室に入っていった。