真っ向から戦いを挑み、新たな道を切り開く

――かつてゴダールは、グリフィスの言葉だとして「銃と女があれば映画は成立する」と言いましたが、この映画の冒頭ではこれを真っ向から否定し、「男が銃を片手に女にキスをするような映画はもううんざり!」と歌い上げます。これまでの映画のセオリーや慣習をぶち壊してやろう、という強い意志があったんでしょうか。

サリー・ポッター それはもちろん! とりわけ映画における女性のイメージはあまりにも古臭くなっていましたから、一度ぜんぶ爆発させ、大胆に書き換えるべきだと感じていました。映画におけるストーリーテリングのあり方も一から問い直してみようと、従来の物語の構造を引っくり返すような仕掛けをあらゆる場所に仕掛けていきました。その直線的ではないストーリーが、人々を戸惑わせた要因のひとつだったかもしれませんが。

 だからといって、それまでの映画史を否定しようという気持ちはまったくありませんでした。それどころか、私は映画史を深く深く愛しています。映画が培ってきた歴史や伝統を尊重し、さらなる成長を望むからこそ、真っ向から戦いを挑み、新たな道を切り開いていく必要があると思ったのです。

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映画史のベールを引き剝がし、歴史や文脈を明らかにする

――多様なテーマやジャンルが詰め込まれたこの映画を見ていると、過去のいろんな映画が次々に思い浮かんできます。本作の中でも揶揄されるように、黄金を探す男たちの映画はチャールズ・チャップリンからジョン・ヒューストンまで過去にたくさんありますし、金持ちの男を射止めようとする女性たちのコメディも山ほどあります。また、雪の中にぽつんと建つ一軒家の光景は、ジュリー・クリスティが出演した大作歴史映画『ドクトル・ジバゴ』も想起させます。

映画『ザ・ゴールドディガーズ』

サリー・ポッター おっしゃるとおり、過去の映画への参照に満ち溢れた映画です。そもそもどんな映画も、それ以前にあった映画の歴史の文脈の中に存在しています。この映画では、曖昧さに覆われた映画史のベールを引き剥がし、その歴史や文脈を明らかにしていきたかったのです。

 映画史を紐解くうえでは、主演のジュリー・クリスティの存在はとても大きなものでした。彼女はすでに大作映画に何本も出演していて、何百万人もの観客がそれぞれに「女優ジュリー・クリスティ」に対するイメージを抱いていた。そこで私は“スター女優”としての彼女がどのように観客に見られているか、そのイメージを彼女自身に意識させるかのように、演出していきました。それは、ジュリー・クリスティという俳優に対するオマージュであると同時に、俳優としての彼女の新しいドアを開ける行為でもありました。

映画『ザ・ゴールドディガーズ』