伝えたいことはそっと奥から忍び込ませる
この経験から得たのは、今後は自分の作品と観客との架け橋をもっと幅広いものにしなければいけない、という教訓です。そこで次作『オルランド』では、観客を置き去りにしないためのいろんな工夫を考えました。観客が物語を最後まで追えるように、より共感しやすい主人公にしたり、ラディカルな思想を伝えたいときは、真正面からメッセージをぶつけるだけでなく、そっと奥から忍び込ませる手法も学びました。
自分を教育し直し、成長し続けるのは何より大事なこと。私はこれまで9本の長編を作り、今は10本目の作品の撮影が終わり、編集作業をしているところですが、これからも映画を通して成長していけることを願っています。
『ザ・ゴールドディガーズ』
ロンドン中心部「シティ」の銀行でデータ入力係として働く黒人のフランス人女性セレステ(コレット・ラフォン)。「数字を移動するだけ」の労働の空虚さに疑念を抱き、やがて「金」と「権力」の関係に強い関心を抱くようになる。一方、「スター女優」のルビー(ジュリー・クリスティ)は、自らの幼少期の記憶と覆い隠された自分自身の歴史を辿り、「偶像」としての自分を客観的に見つめ直す。迫りくる非人格的で官僚主義的な男たちと、規制と規則によって張り詰めた不条理な空間。二人は出会い、言葉を交わし、やがて予感する。男性の経済的覇権争いと「神秘的でいて無力で美しい」という理想的な女性像とのあいだに、何らかの結びつきがあるのではないかと感じ始める。
監督:サリー・ポッター/出演:ジュリー・クリスティ、コレット・ラフォン、ヒラリー・ウェストレイク、デヴィッド・ゲイル、ジャッキー・ランズリー、ロル・コックスヒルほか/1983年/イギリス/89分/配給:プンクテ/© 1983 Sally Potter, Rose English, Lindsay Cooper/8月22日(土)より渋谷ユーロスペースほか順次公開
