走るヒグマに向かって、待ちの誰かが一発撃つ。

当たったか――しかしヒグマは止まらない。猛スピードのまま幅約200メートル、長さ600メートルほどのアカエゾマツ林の中へ飛び込んでいった。

この林が最後の決戦の場になりそうだった。

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そこに関本知春がやってきた。関本は札幌からシカ撃ちに来ていたが、この「大捕物」の噂を聞きつけて、現場に駆けつけたのである。

関本を含む全員で林を取り囲む。もはやヒグマに逃げ道はないはずだ。とはいえ追い詰められたヒグマが、どの方向に飛び出してくるかは誰にもわからない。

これまでの動きを見れば、おそらくヒグマは来た方向――つまり、人間の背後――に戻ろうとするだろう。それを見越して全員が配置についた。

ヒグマが入っていった付近には関本と、崖の上に待ちが2人。見通しのきく牧草地側には赤石と実弟の喜八郎、私を含めた5人が構え、ハンター総勢8人がヒグマの動向を凝視している。

勢子の小野田が、ヒグマの向かった方向から林の中へ入っていく。ほどなくして、かつて誰も聞いたことのない咆哮があたり一面に響き渡った。

「グウォーーーーーッ!」

ヒグマがついに逃げ場を失い、たまらず吠え立てたのだ。咆哮は5度、地を震わせるように続いた。

「すげえ声だ……」

誰かが低くつぶやく。赤石でさえ、これほどの咆哮を耳にしたことはなかった。

背後から突進してきた…

ヒグマと勢子の距離は10メートルもない。ヒグマは姿を見せぬまま、藪の中を勢子に向かって突進してはぶつかる直前で止まる威嚇行動――ブラフチャージを仕掛けてくる。

そして再び咆哮。矢のような怒声が森を貫く。歴戦の勢子2人も、この迫力には抗しきれない。1人が木にしがみついて身をかわし、無線で救援を求めた。

「おい、誰か中に入ってきてくれ」

小野田から悲痛な応援要請が来るが、見通しのきかないササ藪の中に入り込むのは、危険が大きすぎる。

「犬を連れて入ってみる」

急報を受け、関本が猟犬を連れて森へ踏み込む。犬が先陣を切り、藪を裂くように突き進む。すると間もなく、猟犬が血走った目で駆け戻ってきた。