事件が弾けた

 時が経つにつれ、世間と同様に、私も今井の存在を忘れかけていた。

 2015年10月末には、「Sアミーユ川崎幸町」の運営会社と同系列の介護施設(千葉県内)でも2件の転落死があったことがわかり、2015年12月9日には件の虐待事案に対して今井とは別の元職員の男性3人を暴行と業務妨害容疑で書類送検する方針を固めたことが報じられたが、今井に関しての捜査状況は一向に漏れ伝わってこなかったからだ。

 しかし2016年2月15日、事態は急変する。一連の不審死発生から1年以上が過ぎたこの日、思いがけず事件が弾けたのだ。

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 今井逮捕の一報が入ったのは翌日のことだった。

〈一人の殺害容疑認める 川崎・老人ホーム、相次いだ転落死〉

 川崎市幸区の老人ホームで2014年に入所者が転落死した問題で、元職員の今井隼人容疑者(23)が15日、殺人容疑で神奈川県警に逮捕された。入所者1人の転落死について容疑を認めているという。老人ホームでは高齢者3人が同年に相次いで転落死しており、県警が捜査を進める。

 一連の転落死が起きたのは2014年11~12月。川崎市幸区にある老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で、入所者の80~90代の男女3人が相次いでベランダから転落し、死亡した。

 運営会社などによると、最初にあった転落死は同年11月4日。入所者の男性(当時87)が4階から転落した。12月9日には女性(当時86)が4階から、同月31日には女性(当時96)が6階から、それぞれ転落した。(朝日新聞 2016年2月16日朝刊)

 発表は当初、最初に死亡した丑沢さんに対しての殺害容疑だけだった。だが、すぐにほかに死亡した入所者女性2人についても殺害の関与が報じられ、「入所者の言動に腹が立って転落させた」「むしゃくしゃして投げ落とした。殺すつもりだった」と今井が殺意を認める供述をしていることもわかった。

 こうして残りの2人についても自供したことで急展開、一挙に事件解明へ向かった。

 状況を整理すれば、こうだ。