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私はトムの様子を見て、とても同じ世界に住んでいるという実感がわかなかった。戦慄すら覚えたものだ。
トムは基地の中に家族がいるらしく頻繁に差し入れがあったが、ディックにはまったく差し入れがなかった。
ディックは、物静かだった。
そんなディックをトムは粘着質な言葉でよく罵っていた。「お前は、なぜ黒いんだ?」「自分の一族には、黒人野郎の血は入れたくないな」などという気分が悪くなる言葉ばかりだ。
物静かなディックだったが、時には険悪な雰囲気になることもあり、私はひやひやしたものだった。英語を少し話すことができる私は、留置担当の職員によく「仲良くするように仲裁してくれ」と頼まれた。
しかし、戦場で人を殺してきたトムを、20代の私が止めることなどできるはずもない。
沖縄では黒人と白人は棲み分けができていて、遊ぶ場所が違うと聞いたことも一度や二度ではなかったので、アメリカでは厳然と差別が根付いているのだということを理解することができた。
そうこうするうちにトムが起訴される日が近づいてきたので、私はトムに言った。
「長くなるだろうけどがんばってください」
するとトムはあっけらかんとした態度で答えた。
「何を言っているんだ。俺たちはガバメントに守られているし、俺はイラクでは英雄だったんだぞ」