8/9ページ目
この記事を1ページ目から読む
よく意味がわからなかったが、敬虔なクリスチャンなのだろうと思った。
事実ディックは、部屋で聖書をよく読んでいたし、教会関係者が差し入れに来るようになっていたからである。
「お前の頭は大丈夫か?」
また、ディックはトムがいなくなってから自己主張の強さを見せるようになった。
留置場に入った経験のある方はご存じかと思うが、留置場の1日はトイレ掃除から始まる。便器に手を突っ込みきれいにするのが慣例である。私がそれをするのを見て、ディックは私に平然とこんなことを言うようになった。
「お前の頭は大丈夫か?」「お前はプッシーだ」
ある朝、頭に来た私は汚い言葉をディックに投げかけた。
すると、すさまじい力で胸倉をつかまれて、壁に押し付けられた。
「殺してやる!!」
その目はとても冷たく、殺意に満ちていた。恐怖で、私は体が固まってしまった。それでもディックは力を緩めることはしなかった。留置場の担当職員が止めに入らなかったらどうなっていたかわからない。
その日から、私は日本人だけの別の部屋に移された。
その後、ディックも不起訴になった。
私はというと、連日の厳しい取調べにうんざりしていた。