「現場にサツが来てるらしい」
カミンスカスのみで打ち合わせを始めた矢先、五反田の海喜館では本決済前に先走った積水ハウスが自社の現場部隊を動かし、建物に第三者が入れないように仮囲いをする準備を進めていたのだ。
そこにどこからか通報を受けた大崎警察署の制服警官が駆けつけた。警察官に声をかけられた積水ハウスの現場部隊の社員らは相当に泡を食っただろう。彼らは、ワケもわからずC営業次長に連絡。C営業次長は長谷川不在の打ち合わせの場にいたカミンスカスに、事態のなりゆきを伝えた。
カミンスカスはその場を取り繕いながら、手元のスマホで土井にこんな報告をした。
「どうやら現場にサツが来てるらしい」
そのやり取りは土井からカトウにも知らされた。
「物件に警察が来てるようだ。一旦、バラそうか」
カトウは運転手の岡田に「とりあえず長谷川を新宿で降ろして解散しよう」と伝えた。こうなった以上は一刻も早く長谷川と離れなければ、こちら共々、吸い込まれることになる。
車内に緊張が走った。岡田は焦り気味に「議事堂通り」から車を急発進させた。車内はみな無言である。しかし、ここで再び土井からコールが入る。
「やっぱ大丈夫、イケる! 地主を向かわせてくれ」
さすがにカトウは不安を感じ、本当に大丈夫なのかと確認した。
「大丈夫、京プラに戻って」
カトウは岡田に伝え、「議事堂通り」をUターンして京プラ前に戻った。この時、ホウライビルにいるカミンスカスや積水ハウス社員、そしてカミンスカスと土井の間でどんなやりとりがあったのか、カトウは知らない。ただ指示通り元の京プラ沿いに路駐し、長谷川を見送った。
海喜館の現場では警察と工務部のやり取りを眺める付近の住民まで出る騒ぎとなり、工務部の担当者らは大崎署に連行された。
カミンスカスはAやC営業次長に、「喧嘩別れした内縁の夫(宮田)か、あるいは他社による妨害工作だ」と言い訳して、その場を切り抜けたようである。
カミンスカスこそ役者である。