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数十億円の小切手
警察沙汰に発展しながらも、積水ハウス側は残代金の決済手続きを進めると判断し、さらに東京法務局品川出張所に待機させている司法書士に所有権移転登記、つまり本登記申請を進めるよう指示した。仮登記時との違いは、本人確認書類として偽造の国民健康保険被保険者証が提出されたことだった。
司法書士から「本登記申請が受理された旨」を聞いた積水ハウスは、用意していた預金小切手をAや長谷川に手渡した。
まず積水からAに「49億819万3309円」分の預金小切手計8枚を渡し、Aは長谷川に「44億5790万1309円」分の預金小切手計6通を渡した。そのうち長谷川が投資用に買わないかと勧められた分譲マンション購入費分の小切手が、積水ハウスに交付された。
カトウが岡田の車で待機していると、長谷川が小切手を持って現れた。手には件の分譲マンション「グランドメゾン江古田の杜」のパンフレットもあった。
長谷川は岡田に6通の小切手を渡すと、途方に暮れた顔でこう言った。
「このパンフレット……どうしたらいいでしょうか」
購入手続きをしたとはいえ、そこに住めるわけではない。
「そんなん、捨てるしかないだろ」
そう吐き捨てたカトウは、続けて運転手の岡田にこう尋ねた。
「この仕事が終わったら、保険証や権利証とかの道具はどうするんだ?」
「まあ、タイミング見て多摩川にでも捨てておくわ」
岡田は淡々とそう答えた。
これで一仕事終えたか――ホッとするカトウのもとへ、カミンスカスから直接、焦った様子で電話がかかってきた。