「わたしの頭の中にしかなかった物語を安田章大さんが引き出してくれるところからはじまったんです。そこから仲間が奇跡的に増えていって。ロールプレイングゲームみたいですよね」
そう感慨深く語るのは映画『平行と垂直』の原案・脚本を担当した山野海さん。
本作の舞台は大阪・堺市。安田さん演じる自閉スペクトラム症(以下、ASD)の兄・大貴とカウンセラーとして働きながら兄を支える妹・希の絆を描く。企画者は、山野さんの構想に惚れ込んだ安田さんだ。
「出会いは3年前、安田さんのグループ・SUPER EIGHTのバラエティ番組でご一緒させていただいて。そのとき『もし、安田さんを主役に書くならどんな物語を書くか?』と問われ、ウケを狙うことなく大真面目に、自分の中だけで10年間あたためてきた構想、ASDの兄と妹の話を初めて披露しました。その場面はカットされたのですが、安田さんが『それ、絶対やりましょ』と面白がってくださったんです」
山野さんは作家であると同時に女優であり、劇団ふくふくやを主宰する。
「芝居の醍醐味は、役者と観客の生身の人間によるエネルギーの交換だと思っています。それを兄妹の物語で表現する構想に安田さんが共感してくださいました。自分の気持ちをすぐ言葉にできない大貴と希のエネルギー交換を、タイトルの『平行と垂直』のように、二人が交わったり交わらなかったりする様を描こうと思ったんです」
オリジナルストーリーの映画は滅多に誕生しない昨今だが、安田さんの「絶対やりましょ」は本気だった。山野さんが構想を脚本に落とし込む段階から関わり、ある時は下町の焼き肉屋で打ち合わせしたという。
脚本が出来上がると、安田さんは旧知のプロデューサーに企画を売り込み、映画化に共鳴した小林聖太郎監督らスタッフが集まる。そして、妹役のオファーをのんさんが快諾し、撮影がはじまったのだ。
「脚本を読んだのんさんが、ラストシーンで『もっと希望がみえるようにするのはどうでしょうか』と、素敵な提案をしてくださったんです。『すぐ描きたい!』と思って、大貴のある行動を加筆しています」
製作過程で他にも“最強の援軍”が加わっていた。
「ASDの監修で発達障がい研究の第一人者の方やNPO法人の方などが協力してくださいました。障がいのある人たちが創作活動に取り組む『スタジオ クーカ』(神奈川県平塚市)を訪問し、そこで目にしたreonaさんの作品を、小説版『平行と垂直』の表紙絵に使わせていただきました」
山野さんは「作り物でも嘘は嫌」と言う。ASD当事者の日常を細部までリアルに描くことにこだわった。
「安田さんとのんさんが、それぞれの役にとても真摯に向き合ってくださったので、本当に実在する兄妹のようでした。素晴らしい演出をしてくださった小林監督にも大変感謝しています。みなさんのおかげでわたしのやりたかったことが形になりました」
映画化を通して「ASDという特性が、本人の大切な一部であると感じて欲しい」と想いを強くしたという。
「本当にユーモアにあふれた人たちで、そうした部分も随所に取り上げています。だから、映画をみて思いっきり笑って、ASDの方のことを知ってほしいです」
やまのうみ/1965年生まれ、東京都出身。4歳から子役として活動し19歳で小劇場の世界へ。99年に劇団ふくふくやを立ち上げる。竹田新名義で劇団全作品の脚本を執筆。『八重の桜』や『救命病棟24時』など数多くのドラマに出演。自ら書き下ろした小説『平行と垂直』が発売中。
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映画『平行と垂直』
2026年8月28日(金)全国公開
https://www.toei-video.co.jp/heikoutosuichoku/




