たまたま隣になって…

 安倍によれば、飯田とはエントリーナンバーが近かったのでたまたま隣になり、電話番号を交換したり、プリクラを見せ合ったりしたという。当然ながら、この時点で二人が同じグループでデビューするとは想像もつかなかったわけで、安倍からしても飯田とそんなやりとりをしたことは、あとから思えば不思議であり、《今でも運命を感じてるんですよ》と語っている(能地祐子『モーニング娘。×つんく♂』ソニー・マガジンズ、2002年)。

 その日、安倍は、室蘭から父親が運転する車で約3時間かけて札幌のオーディション会場まで来ていた。歌審査を受け終えた彼女が会場を出ようとすると、当時のシャ乱Qのマネージャーの和田薫(現・ハーモニープロモーション社長)が駆け寄ってきて、「それ、すっぴん?」と訊かれたという。和田のなかではこのときから安倍に感じるものがあったらしい。

メジャーデビュー時の安倍なつみ(「モーニングコーヒー」ジャケットより)

シャ乱Q・はたけが「安倍ちゃんは即決勝」

 このあと、安倍と飯田は東京のスタジオでの歌審査に進む。このときの審査では、ロックバンド・シャ乱Qのメンバーたちが、候補者の歌をVTRでチェックしたうえで注文を出し、それに沿ってまたVTRを撮ってもらいチェックしてさらに注文……ということを何度か繰り返すなかで徐々に人数を絞り込んでいった。飯田は最初のVTRチェックで、「お嬢様スタイルで松たか子の『明日、春が来たら』を歌ってほしい」と注文されていた。

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 だが、安倍のVTRをチェックしたシャ乱Qのはたけが「安倍ちゃんは即決勝」とすぐさま結論を下したため、彼女はほかの候補者とは違い、注文の過程をスルーして、このオーディションの「決勝」にあたる最終審査まで一気に進んだ。あいつぐ意外なできごとに、安倍は子供心に「ひょっとして?」と思ったという。