視聴者の怒りの形は、週ごとに変わっていった。
第1話のラスト、樹生が咲子に「あなたの夫はうちの妻と不倫していた」と告げる。多くの視聴者もそれを信じた。
すぐに2人の関係が不倫ではなく「月に一度コインランドリーで雑談していただけかもしれない」ことがほのめかされるが、怒りの矛先は変わらない。
失踪した充を「悪者」にしながら、咲子と樹生は徐々に距離が近づいていく。しかし第6話で失踪から1年ぶりに充が家へ帰ると、2人の関係性を見守ってきた視聴者の怒りは爆発した。「マジで何しに帰ってきたんだよ」
充が自分とあずさの関係は不倫ではないと断言し、逆にパートナーの喪失後、助け合ってきた咲子と樹生の関係を詰問したところで、SNSの怒りは頂点に達した。
後に充の親に愛されなかった苦しい生い立ちと、その中で自分を守るためにリセット癖・失踪癖を身につけてしまったことが明かされる。それでも「不倫よりたち悪い」「不倫より邪悪なのでは?」と、批判は止まらなかった。
「ちょっと不倫まがいのことしときましょうよ」で断罪モードに
次にターゲットになったのはあずさだった。事故当日、1人で長野へ向かおうとしていた充に「ついていきたいかも」と押しかけて同行したことや、「どうせ理解されないなら、ちょっと不倫まがいのことしときましょうよ」という通常の夫婦の形に収まらない発言をしていたとわかると「不倫じゃなくてもアウト」とSNSは断罪モードに。
面白いのは、充とあずさの関係が不倫ではないと判明したあとのほうが、むしろ視聴者の怒りが強まっていることだ。視聴者はまず2人の関係を不倫という枠に入れて怒り、夫婦なのに失踪した充に怒った。しかし2人の関係性が「月に一度会って話すだけ」と判明すると、さらに怒りは増した。理解できる悪事よりも、理解できない関係性への拒否反応の方が強いのだ。
しかし強い怒りを巻き起こしながら、「T乾」は視聴者を巻き込み、視聴率を上げ、話題を拡大してきた。では、どこがうまくいっているのか。ひとつは「フィルター」という仕掛けだ。

