別れ際に私が取材依頼の手紙を渡すと、杖を持ちながら受け取り、「すみません、(封筒を)折ってしまって。ポケットに入れて申し訳ありません」と話した。

 飯塚がゆっくり背を向けたので、私はマンションの敷地外に出たのちに振り返った。飯塚は数センチずつ進みながら、消火栓の格納箱に手を置いて体を支えていた。

 この日の夜、長男は父親の生活に必要な椅子と踏み台を持って実家を訪れた。父親が取材を受けた日と重なったのは偶然だった。飯塚は長男に不安を漏らした。

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「TBSの記者につかまってしまい、緊張で仕方なくしゃべってしまった。高齢ドライバー問題の一般論についてコメントしただけなんだけど、ビデオで撮られてしまった」

 飯塚は、記者に直撃された場合の答えとして、次の3点を日記に書いていた。〈捜査に協力している〉〈被害者には対応している〉〈大事故を起こして申し訳ない〉。

 このときは、積もる思いが溢れてしまったのか。

テレビをずっとチェック

 長男は日々の事故対応に精一杯で真剣に考える余裕がなかったが、片言隻句を切り取られて報道されるのではないかと心配した。

「『高齢者に安全な車を開発してほしい』というのは一般論としては問題ないかもしれないけど、お父さんが言うのは偉そうだし、踏み込みすぎだと思う」

 飯塚は放送されるのではないかと警戒し、TBSのニュース番組を夜までずっとチェックしたが、結局流れなかった。