丸投げ、丸投げ、丸投げ

 そうです、これはかなり高等な話なのです。だって、いくら考えても何にも思いつかないからと監督に丸投げした主演俳優と、主演俳優から丸投げされてどうしたものかと思ったところ、結局、自分も何にも思いつかなかったので、とりあえず衣装をお願いしますとだけ言ってスタイリストに丸投げした監督が、撮影当日になってもまだ自分がこれから何をするのか2人とも分からず、それぞれに別の車で同じ現場に向かっているのですから、状況としてある意味、間抜けです。

 でも事実はちっとも間抜けじゃない。むしろ、監督も主演俳優も2人とも身を切るようなヒリヒリした緊張感にとり囲まれながらロケ現場へと護送され、尚も2人は、本番まで自分自身と向き合い続けなければならないのです。

 これが『水曜どうでしょう』の監督と主演俳優の作品に臨む真剣な姿勢なのです。おそらく監督も主演俳優も逃げ出したくなるほどの緊張と不安の中にいるのです。しかしそこから逃げず(だって逃げる場所なんかねーしと思ってるはずです)、だけど無策のまま、どんどん迫って来る本番のその直前まで集中を怠ろうとしない境地なのです。

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 それはあたかも釣り師が日本最大のハゼを釣り上げようと、釣り上げる瞬間を信じ続けて、魚影が濃くなるその瞬間をじっと待って水面を見つめているようなものです。

写真はイメージ ©getty

 とはいえ、世の中にそんな仕事の仕方があるとは世間の人は誰も思いもよらないから。だからつい聞いてしまうのです、「これから何をやるんですか」と。そうやって事前に聞いておくのが世間流の仕事の作法だからです。

 ですが、『水曜どうでしょう』的には、そんなことを撮影当日聞いてしまえるようなやつは、「集中力を欠いた無責任なやつだ!」ということになるのです。