安田章大の存在は「すごく大きかった」「神の使い」

――作中でも言及されていますが、大貴は「言葉」で感情を表すのが得意ではありませんよね。そのため希は、大貴の眼差しや表情、動きを「見て」反応する。台詞のやり取りに頼らないコミュニケーションを重ねられるなかで、発見や心の動きはありましたか?

のん なんといっても、安田さんの存在がすごく大きかったです。もちろん撮影に入る前には、自分なりに希の感情の流れや各シーンに至るまでの積み重ねを読み解いていきましたし、それを土台に演出をつけていただきました。希と同じ立場にある、障がいのあるごきょうだいを持つ心理カウンセラーの方にお話を伺えたのも大きな経験でした。

 安田さんのお芝居を前にして、どう希として動けるかも当然準備していったのですが、いざ現場に行ってみたら、想像を超えていて。大貴がとても繊細にそこに存在していたんです。もう初日のその瞬間から「あ、希はこんなふうに大貴に寄り添えばいいんだ」というのが明確になりました。安田さんは、偉大なる存在です。

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©2026「平行と垂直」製作委員会

――以前テレビにご出演された際に、安田さんを「神の使い」と例えていらっしゃいましたよね。

のん はい。あの方は……でっかかったですね。どんな場所にいても、どんな人に対しても変わらない。相手のポジティブな部分もネガティブな部分も全部ひっくるめて接してらして、しかもそれがすごく自然体なんです。もし私がワーッとパニックになったり、テンションが限界まで上がったりしても、そのまま受け止めてくれる安心感がありました。

 ご本人は「唐十郎の世界に出てくるような、面白いおじさんがいっぱいいる尼崎で生まれ育ったからかな」とおっしゃっていました(笑)。「幼少期から個性の塊に囲まれていたから、許容範囲が広がったのかも」って。「人間、色々や」という感覚をナチュラルに持っていらっしゃるんです。

(撮影=小見山峻)

――その境地にはなかなか至れませんよね。

のん そうですよね。私は自分にない感覚の人と出逢うと、思わず思考停止しちゃうんです。だけど、安田さんはどんな相手を前にしても「あなたはそうなんや」と受け止められる。「こんな大きな器の人がいるなんて!?」と衝撃を受けました。安田さんは私にとってニュータイプだったんです、これまでめぐり逢ったことがまったくないという意味で。

 しかもあんなに優しくて、色んなことを知っていて、頭の回転が速くて……。なのに、それをちっとも鼻にかけないんです。私だったら「すごいんだよ!」と誰かに知ってほしくなってしまうのに。