『大学で育つアスリートのライフキャリア――“部”活動を「学びファースト」へ』(東信堂)

 日本テレビ放送網株式会社取締役常務執行役員の岡部智洋氏は、2024年4月から一年間、桐蔭横浜大学の客員教授として特別講義「アスリート・クロス」を主宰し、前Jリーグチェアマンや大手メディア、スポーツメーカーなどの第一線で活躍する13名のゲストを招いて教壇に立った。

 その講義録をまとめた『大学で育つアスリートのライフキャリア――“部”活動を「学びファースト」へ』(東信堂)が刊行。競技に関わった経験がその後の人生をいかに豊かにするか――多くのヒントを学生アスリートに届けたいという思いから生まれたこの授業と書籍について、岡部氏に詳しく話を伺った。

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なぜ大学での講義を引き受けたのか

――この特別講義「アスリート・クロス」を引き受けた背景には、どのような思いがあったのでしょうか。

岡部:中学や高校、大学を通じて本気でスポーツに取り組み、パフォーマンスを上げる努力をしてきたアスリートが、大学卒業を機にそれを終えてしまう。以前からこの状況が残念だなと思っていました。

 彼らがスポーツで培った経験や能力を、社会に還元するきっかけとしての講義を、今回はサッカーでも野球でも大学日本一になったことがある桐蔭横浜大学という環境で、しかも受講者のほとんどが体育会学生だったということも、お引き受けした大きな要因でした。大変だとは分かっていましたが、やりがいもある、と。

――ゲスト講師の方々の人選の理由を教えてください。

岡部:最初は学生目線で考えました。プロになれるのはほんの一握り。大学2年生の段階で「今知っておくといいだろう」というジャンルと人選をしたつもりです。私にとって身近な存在のアナウンサーから、Jリーグをトップで経営したレジェンドまで、幅の広い13名にお願いをしたところ、実際に蓋を開けてみると、私自身が一番勉強になったかもしれません。

講師陣との90分間が生んだもの

――特に印象に残った登壇者はいますか。

岡部:全員が印象に残っています。その中でも、30数年来の付き合いである田中晃さん(元WOWOW会長、現日本車いすバスケットボール連盟会長)の話は、普段だったら飲み会でお酒を飲みながら、半分ぐらい忘れちゃいながら聞いているわけですが(笑)、今回は違った。ああいう教室という形でまるまる90分聞けたからこそ、箱根駅伝中継や、パラスポーツの報道の在り方についても深く心に残る話がありました。

――学生にとっては、どのゲストが刺さったとお感じですか。

岡部:アナウンサーの二人(田中毅氏・郡司恭子氏)は、割と身近な存在として学生が受け取りやすかったのではないでしょうか。テレビというメディアで見聞きしている人たちが、実際にどう仕事をしているかを90分語ってくれる。その臨場感は大きかったと思います。

 同じ桐蔭横浜大学出身の合志卓也さんのようにスポーツメーカーで働く“先輩”も来てくれた一方で、Jリーグのチェアマンを務めた村井満さんや田中晃さんはもう60代、70 代のレジェンドです。近い将来像から遠い目標まで、スペクトラムの広い人選になりました。

桐蔭横浜大学の教壇に立つ岡部氏