――久保九段のプロデビューは1993年です。当時は居飛車穴熊ブームで、振り飛車にとって最大の強敵でした。それが、ここ数年は居飛車の急戦も有力になっています。

久保 むしろ急戦を警戒しないといけない時代に入ってきました。本当に深く研究されているので、ものすごくシビアな序盤戦になります。間違えると攻め倒されて、そのまま持っていかれる恐れもある。

 駒組みで1手も間違えられないという意味では、相居飛車の角換わり腰掛け銀同型のような戦いに近づいてきています。序盤の緊張感は、対穴熊よりもありますね。もちろん、居飛車穴熊も強敵のままです。

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――AIを源流にした新作戦や囲いも増えています。

久保 居飛車が△4二金上と金無双風に組む玉形は有力ですね。3一に銀がいると堅いし、4一に玉の逃げ道があると広いです。これまでの急戦は居飛車の玉が薄いから、振り飛車が勝ちやすくてありがたかったんですけどね。従来の定跡と部分的に同じ攻防でも、△4二金上だと結論が違ってきます。その辺りの知識や感覚は地道に修正していくしかないです。

©︎杉山秀樹/文藝春秋

若手の振り飛車党で注目するのは…

――現在はトップ集団に振り飛車党が増えるどころか、雁木党に転向している人がかなり多いイメージです。

久保 ここ30年ぐらい、振り飛車党は棋士の1、2割です。雁木に流れているのは、振り飛車党が少し得をする出だしがあるからですね。私も練習将棋では指していますよ。

――若手の振り飛車党で注目している人を教えてください。

久保 新四段の小窪碧(こくぼあお)くんですね。今年2月に研究会で指す機会があって、自分と似た将棋だなと久々に思いました。奨励会初段だったときの菅井(竜也八段)くん以来、2回目ですね。

 どこが似ているかといわれると、感覚的なものなので表現が難しい。でも、私の振り飛車は古いと思うので驚きました。小窪くんは終盤も強いので、きっとこれから活躍するだろうと思います。

――AIが将棋界で一般的になり、10数年経ちます。振り飛車の変化はいかがですか。

久保 振り飛車の選択肢は狭まっています。先手石田流、後手ゴキゲン中飛車は淘汰されました。戸辺(誠七段)くんと話すと、「振り飛車はどこかで定跡をずらして、自分の経験値の高いところで戦うしかない」という結論になります。対抗形の経験だけは、居飛車党よりも振り飛車党のほうが絶対に上ですからね。

――どうずらしているか、その傾向を分析されると狙い打たれそうで難しいですね。

久保 そうですね。だから、とにかくあっちこっちに散らして、自分の経験値が高くて相手の低そうなところに持ち込めるように、データベースを見ながら研究するしかないです。