――「AIを使う」といっても、その方法は棋士によって様々です。特にAIは振り飛車を評価しません。久保九段はどうやって使っていますか。

久保 私はAIを研究会や公式戦の振り返りに使うことがほとんどで、厳密な評価値よりも自分の感覚を重視しています。AIは、振り飛車をきちんと評価できていないんじゃないかと考えているんですよ。

 AIの弱点は、一回覚えたことを忘れられないところだと思っています。例えば、人間なら弱いときにだめだと思った形でも、強くなって考え直したら評価が変わったりするじゃないですか。

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 だから、AIがもうワンランク強くなったときに、振り飛車の評価はまったく違うものになるような気がしています。

©︎杉山秀樹/文藝春秋

――それこそ、量子コンピューターになれば評価が一変するかもしれませんね。

久保 そういえば最近、チャットGPTを始めたんですよ。そこでいろいろ聞いています。例えばチェスプレイヤーの研究方法で、自分が優勢な局面からAIと対戦して逃げきれるかというトレーニングがあるようです。将棋棋士でAIと対戦している人は少ないはずなので、これは参考になりました。

 私も自分が評価値プラス800点ぐらいの局面からAIと指していますが、相手の思考時間を短く5秒で設定しても勝つのはかなり大変で勉強になっています。

女流棋士の実力について

――AIのほうが人間を凌駕していることを思うと、AIから逃げ切れるようになれば怖いものがないかもしれません。ところで、いまの女流棋界は福間香奈女流四冠、西山朋佳女流四冠の振り飛車党が独占しています。久保九段からみて、それぞれの振り飛車にはどういう特徴がありますか。

久保 そのふたり同士の対戦だと、相振り飛車が多いです。他の人が入れない領域で、私の経験よりも上をいっていると思います。

 対抗形で考えると、福間さんのほうがオーソドックスな振り飛車で、棋士でも似ている人が何人かいる。西山さんは終盤が鋭くて、豪快なイメージです。似ている人は思い浮かびません。

――トップの実力だけではなく、女流棋士は全体的に底上げされたイメージです。奨励会に入れるぐらいの実力があれば、昔は上位での活躍が約束されたものでしたが、いまはそうでもありません。

久保 レベルは以前よりはかなり上がっていると思いますね。いまは研修会でB1に上がらないと女流プロになれませんが、そのレベルなら奨励会に合格できるレベルです。

――弟子で実娘の久保翔子女流1級は2022年にデビューし、現在は女流順位戦C級に属しています。将棋は家でよく指すんですか?

久保 いや、うちの娘は大学にいっているので、なかなか指す機会がないですね。一門研ぐらいでしょうか。

――久保門下の榊菜吟女流1級は、今年に2級から昇級するも成績不振によりデビューから4年で引退となりましたが、新規定の立ち上げに伴う特例により研修会に戻って再出発となりました。

久保 榊とは1年前から話をしてきました。どうも引退かもしれないとなったときも、ひとまずは女流順位戦で昇級すれば残れるかもしれないので、それを目指して頑張ろうと取り組んできました。

 いま、私と週1でネット将棋を指しています。級も上がったし、女流順位戦も勝ち越しで終えたから、胸を張って研修会で頑張ろうと話しました。実際、ここ数年は力がついてきましたからね。早く戻ってくることを期待しています。(つづく)

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