振り飛車党から居飛車党に転向するプロが相次いでいる。アマチュアに人気の高い戦法であっても、ただでさえ棋士の使い手は少数派だ。藤井聡太竜王・名人は振り飛車をまったく指さない。また現役奨励会三段に話を聞いたところ、約40人いる三段のうち、振り飛車党は2割にも満たず、さらに雁木を指さない純粋振り飛車党となると数人に限られるという。AIが振り飛車を評価しないことも思うと、苦しい状況が伝わってくる。
そんな中、ひとりの振り飛車党が順位戦でB級1組に復帰した。「さばきのアーティスト」の異名を持つ久保利明九段(51)は、直近では最後の振り飛車党のタイトル保持者で、50代の順位戦昇級は快挙である。
ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かったなかで、どうやって復調したのか。若者から最新定跡を学び、心理学や禅、量子力学など様々なジャンルの本を読み、護摩行やメンタルトレーニングの経験を生かして貪欲に成長を求める。その姿勢は、17歳でプロになったときと変わらないようにみえた。(全3回の1回目/つづきを読む)
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若者の将棋観にフィットできた
――前期の順位戦で昇級し、B級1組に復帰されました。勝因は何だと思いますか。
久保 B級2組でも結果が出てない数年間だったので、なぜ急に成績がよくなったのかは不思議です。思い当たる要因は、昨年の夏から弟子の戸川(悠二郎奨励会三段)と将棋をよく指していることでしょうか。プロ四段まであと一歩ですし、練習将棋をネットで週1回、実際に会って指すのも月に3、4回はやっています。
――ハイペースですね。
久保 ええ。彼も三段ですから、序盤の研究は私よりもかなり詳しい。当然ながら中終盤も勝負にもなる。やっていくうちに、なぜか私自身の成績が上がっていきました。
これまでも三段や若手プロとやってきたんですけどね。単純に練習将棋を指す機会が増えて、序盤に詳しくなり、若い世代の将棋観にフィットできたのかもしれません。
――そんなに若者と将棋観が違いますか。
久保 かなり違いますね。私の大局観はAIが出てくる前の時代に培ったものです。そこで凝り固まった先入観を少しずつ外せているような気がします。
いつの時代も、序盤の研究は三段がいちばん上をいきます。例えば、いまの駒組みと作戦は昔と全然違います。銀を取れば振り飛車よしだった定跡も、結論が逆転するケースは珍しくありません。これらはAIがないとたどり着けなかったと思うので、少しずつ進化しているんでしょうね。
しっかり研究したければ、若い子とやったほうがいいですよ。モチベーションが高いですし。



