執拗に被害者を襲う共通点
十九日午後四時ころ、苫小牧市字アツベナイ苫小牧営林署管内事業区の山中で、苫小牧市表町藤田木材店帳場、広瀬忠行さん(五四)が、払い下げの原木調査中、突然八十貫〔約三百キロ〕位の雄熊が襲いかかり、広瀬さんが付近の木によじ登ったが、右足首にかみつき、右足に爪をかけ、さらに左の臀部をえぐり取られた。気丈夫な広瀬さんは腰のナタを抜いて飛び降りざまに熊をめがけてナタを横殴りになぎ払ったところ、熊はおそれをなしたか漸次後退して姿を消した。(中略)なお同日午前、山中の二頭の仔をつれた雌熊を目撃した人もあり、入山者に注意が喚起されている(「北海タイムス」前掲)
この事件が、冒頭に紹介した赤松作業員が木から引きずり下ろされた事件と酷似していることにお気づきだろうか。
襲われた広瀬は足首や尻をツメでえぐられながらもナタで応戦し、全治2カ月の重傷で命拾いしたが、加害熊が執拗に被害者を襲った状況は、食害が目的であったことを物語っている。
そしてこの事件の24時間後に、15キロ北の千歳町山林で老人が喰い殺され、さらに1年後、約30キロ離れた定山渓で、赤松が喰い殺された。
赤松を襲った個体は体長七尺(約2.1メートル)、広瀬を襲った個体は体重八十貫(約300キロ)と、体格的にも共通する。
果たして同一の個体による凶行だったのだろうか。
「変死体事件」との奇妙な一致
それを考察するにあたり、筆者は「ある仮説」を立てた。
そして試みに、それらのデータを人喰い熊事件の分布図に重ねてみた。
すると案の定、見事に合致したのである。
その「ある仮説」とは、「変死体事件」との関連である。
次に示すのは、昭和20年から30年に発生した、山中での変死体記事の一覧と、発見現場を示す地図である。
札幌から苫小牧に至る山林で、合計12体の白骨・変死体が発見されているが、その中で注目すべきものを、一連の人喰い熊事件とあわせて、時系列で見てみよう。