映画に出始めてからというもの、北川は現場で、自分の役割や求められているものを深く考えるようになっていた。そのなかで《私たちは『俳優部』という部署であって、『撮影部』がいたり、『メーク部』がいたりするなかでの『俳優部』だと》強く感じたという(『AERA』前掲号)。俳優の仕事は一見すると華やかに思われがちだが、現場でそれぞれの役割を果たしながらみんなで一つの作品をつくりあげるという意味では、ほかのスタッフと変わらない、というわけである。
2009年には大学を卒業し、《これまでは学生だけど好きな仕事をするという感覚でしたが、今は職業として女優をやっているという気持ちです》と、仕事に取り組むときの肚の括り方が変わったと話していた(『週刊文春』2010年3月18日号)。当時、映画『花のあと』(2010年)で初めて時代劇に挑戦し、殺陣や所作の稽古に半年以上かけて取り組んだ。ここから、ひとつの役を演じるには、役と向き合うだけでなく、役そのものになって息づくことができないといけないと思うようになったという。
デビューから10年、ようやくスタートラインに立てたと思えた
北川は17歳でスカウトされて以来、周囲を見渡せば同年代にかわいい子も才能のある子もいっぱいいて、素質や積み上げてきたものが自分とは全然違うと落ち込むこともあったという。それでも、個性など違う部分でなら勝負できるのではないかと信じ、追いつき追い越せでがむしゃらに続けてきた。そしてようやく彼女たちと肩を並べ、スタートラインに立てたと思えたのが、デビュー10周年のときだった。
折しもそのころ、ドラマ『HERO』第2シリーズ(2014年、フジテレビ系)にレギュラー出演する。北川の役は、主演の木村拓哉演じる検察官・久利生公平の相方である検察事務官の麻木千佳だった。麻木の前任の事務官を演じたのは松たか子とあって、そのあとで何ができるのかという意見も当初あったらしい。しかし、北川自身は錚々たる出演者が集まった同作に、自分がオファーされたことがうれしく、《一気に一流の仲間入りをさせてもらえた気持ちになった》と語っている(写真集『30 Keiko Kitagawa』SDP、2016年)。(つづく)
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