6/6ページ目
この記事を1ページ目から読む
母が残したとしか考えられない大金
そんなことを考えるなか、最近、ふと思い出したことがあった。遺産だ。
16歳、住み込みで飲食店に就職したとき、指定の銀行で口座をつくろうとしたら自分名義の口座が既にあり、そこに大金が入っていたのだ。
わけがわからなかったが、貯金をしてくれていたのは紘子さん以外には考えられなかった。結海さんはそのとき「もう凍結されてるから引き出すことはできません、と言われたけれど」と続ける。
「何のお金だったんだろうと思うけど、母が私のために貯めておいてくれたのかな、って。だから母は、虐待するとか子どもに対しては不器用だったけど、根は優しい人だったんだろうな、って。不器用ながらも、ちゃんと私を育てようとしてくれていたんだろうな、って」
結海さんは去年、親族の誰にも会わない日を狙いはじめて墓参りに行き、そっと紘子さんの墓前で手を合わせた――。
