――見つかったら怒られる、と。

「うん。でも怒ったことなんてないよ。私がすることは、女房の洋服を脱がせて、淡々とシャワーの水で排便したものを流すだけ。すると、最初はシャワーもお湯になってないから、『冷たい!』なんて逆に怒られたりね」

老老介護でつまずくのは、介護する側が「介護うつ」に陥ったり、自殺や要介護者への「虐待」などにつながったりする可能性がある、という点である。超老老介護になれば、さらにそれは加速すると言われている。

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背景にあるのは加害者の「不眠」だ。調べると、多くの加害者が四六時中、介護に追われて睡眠不足に陥っている、という報告があった。健二郎の場合は、どうか。

――睡眠不足で「介護うつ」になり、介護者がついカッとなって声を荒らげたり、暴力を振るったりするなどの虐待事件も少なくありません。

「私はやったことないね」

「怒ったのは1回きり」その日が最後に

――怒りのような感情も湧かなかった。

「ないです。それが湧いたのはいちばん最後だけ。(犯行時の)夜8時、私はちょうど風呂から出たところでした。臭いで勘づき2階の寝室へ続く階段を上がりました。見れば、オムツのなかにしたウンチをね、オムツを外して手でかき回した後でした。かき回して四方八方に散らばしていました。おそらく、さらに病気が進行していたのでしょう。トイレ代わりのようにタオルを重ねてすることすらもなかったのです。

『何でやったんだ!』。あまりの惨状に、なぜかこのときだけは声を荒げていました。初めてのことでした。けれど、反応がないから、怒ったのは1回きり。女房は、布団に寝たままきょとんとするだけで、何をしたのかもわかってない様子でした。

実は、前にも何回か同様のことがありました。そのたびに私が『こういうことしちゃいけないんだよ』と優しく諭すと、女房は『私のこと嫌いになったんでしょう。邪魔なら殺しなさいよ』と。そう言われても、もちろんこれまでは相手にしていませんでした」