妻は身動きひとつしなかった
――頭を持ったときの奥様の反応は。
「全然ない」
――では、首を絞めたときは。
「苦しむような表情をすることはなかった。いまでも不思議に思うんだけど、首を絞めても、もがきもしない。両手を胸の上で拝むように合わせたまま、身動きひとつしなかった。首を絞める直前に女房と目があった。瞳孔が開いてました。白目がなく黒目だけで、目がぜんぶ真っ黒。何も言いません。お互いに」
――健二郎さんの心中は?
「もう死んじゃってるんだなって」
――絞める前に?
「そう。こういう死に方ってあるのかなって。うちの女房の兄が田舎にいるんだけど、その兄から聞いたおふくろさんをみとったときの状況と似てましたね。だから、親子で同じような死に方をするのかなと」
――足をばたつかせるとかも。
「ない。静かでしたよ」
――奥様もそれを望んでいるようだった。
「かもしれないね。そう思う。不思議ですよ。少しでも抵抗すれば、また違ってたんだろうと思うんだけど。抵抗は一切なかった」
罪の意識は「あんまりなかった」
――力を込めて絞めないと死ぬまでには至らないかと思います。もし奥様が抵抗していたら、力を緩めたかもしれないっていう思いが。
「力はそんなに入れなかったよ」
――加減をしていた?
「加減……、どこかでそういう気持ちがあったのかな」
――殺意はなかった。
「『殺したい』って思ったことなんて、ない」
――では楽にしてあげたい、というような……。
「そっちの方が強いかな。女房は女房で苦しんでいたからね」
――罪の意識はありましたか?
「あんまりなかった」
――病気はどんどん進行する。なのに施設にも入れない。この生活を早く終わらせるにはこれしかなかった、と。
「そこまで断言はできないけど。ただ、はっきり言えることは、私が先に逝って、女房だけになったら、女房は大変だったろうなとは思います。私以上にね」
――奥様が亡くなった直後から逮捕に至るまでっていうのは、自宅でずっと一緒にいた?