仕事に家事、育児と忙しい日常を過ごす30~60代の働きざかり世代。そんな中、突然親の介護に生活ペースを乱されて苦悶する人は少なくない。
「するべき」ではなく「しなくていい」をベースにした介護の方法論があってもいいのではないか? 介護の現場を数多く取材してきたノンフィクションライター・旦木瑞穂さんはそう提案する。
ここでは、旦木さんの『しなくてもいい介護』(朝日新書)より一部を抜粋。認知症になった76歳の母親の“嫉妬妄想”に苦しむ田村千鶴さんと父親の事例を紹介する。(全3回の2回目/続きを読む)
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4人きょうだいで双子の姉
中部地方在住の田村千鶴さん(40代・離別)は、建設業の会社を経営する父親と、看護師の母親の間に双子姉妹の姉として生まれた。すでに5歳上に兄、3歳上に姉がいたが、大きなきょうだい喧嘩もなく、両親も含め穏やかな家族だった。
やがて、兄は15歳になると、スポーツ推薦で市外の高校に進学。実家を出て下宿した。高校卒業後は市外で就職したが、20代後半で結婚すると実家と同じ市内に戻り、父親の会社に転職。その後父親の会社を継いだ。
姉は18歳で専門学校に進むと同時に他県で一人暮らしをスタート。卒業後はそのまま就職し、25歳頃結婚。現在は実家から高速を使って2時間ほどのところで暮らしている。
田村さんの双子の妹は、他県の短大入学と同時に実家を出、その後3年ほどアメリカに留学。帰国後は数年実家で暮らしたが、28歳くらいの頃、実家の近くで一人暮らしを始めて、結婚後も実家と同じ市内で生活している。
田村さんは、大学入学と同時に実家を出て他県で一人暮らしを始め、卒業後は看護師になった。20代前半で結婚すると、実家から高速を使って3時間ほどのところで生活を始めた。
