ところが田村さんは、24歳で娘を出産したあと、半年ほどで離婚。
「もともと一人暮らしの方が自分に合っていたため、離婚後も実家に帰りたいとは思いませんでした。実家が田舎だったため噂が広まりやすく、両親に肩身の狭い思いをさせるのが嫌でしたし、憶測や噂が飛び交うのが私も面倒だったことも実家に戻らなかった理由の一つです。看護師の仕事は辞めようか、パートにしようか色々迷い、結局正社員のまま続けることを決めました」
ただ、娘が幼いうちは、実家に頼らざるを得ないことはあった。どうしても田村さんが仕事を休めない時は、母親が田村さんの家まで来て娘の世話をしてくれたり、娘が水痘などの病気に罹患した時は、感染解除になるまで実家で娘の看病をしてくれた。
「母子2人暮らしの苦労もありましたが、友だちのような仲の良い母娘関係が築けました。でもこうした経験から、何事も周りに頼るより、1人で調べて1人で意思決定するという気持ちが強くなったと思います」
認知症かもしれない
2000年。52歳の父親は自身の会社で働き続けていたが、母親は55歳で看護師を退職すると、畑仕事をするように。いつしかカメラ、登山、旅行、編み物が趣味になり、写真を撮りに1人で海外へ出掛けることもあった。
そして2021年春頃のこと。
年に1~2回実家に顔を出していた田村さんだが、76歳になった母親の言動に「あれ?」と思うことが増えていく。
「納豆があるのに、また納豆を買ってくる。冷蔵庫や食品庫内に、賞味期限が切れたものが目に付く。炒めたら食べられるニンニクの芽と肉がセットになったパックばかり買ってきている……など、最初は『おっちょこちょいだなあ』とか、『歳だから簡単に料理できるものが好きになったのかな?』とか思っていました」
しかし同じ年のゴールデンウィークには、「ただの物忘れで片付けられない」と思う出来事が起こる。
田村さんの家に両親が遊びに来てくれたあと、帰りに母親が、自分の財布やスマホが入ったカバンを忘れて帰ってしまったのだ。