妻に怒られました

阿川 じゃあ、大人計画のお芝居は続くんですね。今のお宅が終の棲家になりそうですか。

松尾 いやぁ、分からないですね。阿川さんは今回の引っ越しで最後くらいになるんですか?

阿川 毎回「これで最後だ」と言っています(笑)。海の見える家に憧れはあるんですけど、周りから「年を取れば取るほど、スーパーや病院から近いところに住みなさい」と言われて。まだ夢は捨てていないんですけど。やっぱり家って夢がありますね。

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松尾 嗜好品ですよね。

阿川 松尾さんの場合、ローン組んでいないから、引っ越して人に貸す発想が出てきたりして。

松尾 大家にだけはなりたくないなあ。僕も妻も心配性なので、大家として管理するとなると、色々な厄介事にまきこまれそうな気がします。

阿川 前の家に近い、今お住まいの某町には住んで10年ぐらいなのか。

松尾 愛着はありますね。こんな人見知りの僕でも行きつけの居酒屋があって気軽に話せる店主ができましたから。それに妻と2人で居酒屋に行くのが楽しくて。

阿川 仲睦まじいなあ。

松尾 昨日も一緒に飲んでて、僕が「また新しい家もいいな」と言ったら、「簡単に言うな、まだ3年しか住んでないだろ」と怒られました(笑)。

一筆御礼

 いよいよ私も引っ越し日が迫ってまいりました。申し上げるまでもなく、家の中はカオスでございます。よくもこれほどに不要なもの、古いもの、捨てられないものを溜め込んだと我ながら感心するばかり。今日もベッドの下に押し込んでいた禁断の箱を開けてみれば、まあ驚いた。私が高校2年生のとき、英語の先生から手渡された1枚のメモが出てきたのです。いわく「先日の総合テストの結果は大変思わしくなく残念に思います。(中略)先生方との協議の結果、貴女の今後の努力を条件として今のクラスに残すことに決めました。本当にしっかり勉強の実をあげてください」。たちまち私の頭が半世紀以上遡り、その日、泣きながら家に帰ったことを思い出しました。なんでこんなメモを1枚だけ残しておいたのか。と考えて、1つわかったことがあります。松尾さんも私も、なぜ引っ越しを繰り返すか。そこに未来への夢を託すつもりで、実は過去を掘り起こしたい衝動があるのかもしれないと。このタイミングに松尾さんにお会いして、まことに幸いでございました。

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