水津さんの作った問題にはある種の「格調」が漂っている
道蔦 番組の裏方にいた僕にとっても、「水津・西村時代」は忘れがたい4年間です。まさに日本最強のクイズ王の二人に、どんな問題を投げかけるか。難問を作るのは簡単です。でも、それをやっちゃうと二人とも答えられず、あまりにもそれが多いと番組でもカットされてしまう。ですから、二人のストライクゾーンという、それはそれは狭い幅を狙うのが本当に大変でした。
水津 クイズっていうのは、問題を作るのが大変なんですよ。それはよくわかる。私は出版社で仕事をしていたこともあって、読書することで自然と知識を蓄えるようなところがあるんです。それで、自分の知識を整理するために問題を作成することもあったんですが、それには時間も手間もかかっているわけ。ところが最近はね、検索すると知りたいことがどんどんわかるでしょう。私が苦労して作り上げたような問題なんて、1日もあれば簡単に作れてしまう。
道蔦 いや、水津さんの作った問題はある種の「格調」が漂っていると思います。ツイッターに「水津本」(https://twitter.com/suitsubon)ってアカウントがあるんですが、そこで紹介され続けている水津問題は、クイズ作家としての僕からしてもなるほどと思わせられるものがある。「クーベルタンにマラソンを提唱した言語学者は誰でしょう?」とか。
水津 まあしかし、西村との対決はいつも大変でしたよ。「史上最強」の決勝はまず早押し対決があって、その後「カプセルクイズ」があったでしょ。あれが辛かった。
カプセルの中でかかっていた曲
道蔦 「カプセルクイズ」はその昔、1978年くらいだったかな、日本テレビでやっていた『全国クイズチャンピオン大集合』というクイズ番組があって、そこからもらったアイデアです。1対1対決の際に、お互い一人ずつ円柱形の小部屋に入って、同じ問題にそれぞれ答えていくスタイルです。
水津 「史上最強」の代名詞みたいなクイズだったけど、あのカプセルはひどかったんだから(笑)。とにかく中が暑い。そして相手の答えが聞こえないようにヘッドフォンをつけさせられるんだけど、かかってる音楽がボン・ジョヴィとか。
道蔦 そうです、そうです(笑)。
水津 ローリング・ストーンズのときもあったと思う。とにかく音楽がガンガンかかるもんだから、私なんか頭がクラクラして。毎回、違う曲がかかってたけどスタッフに「今回はどうですか?」って聞かれても「頭が割れそうだ」としか言えませんでしたよ。だから、普通にわかる問題でもパッと答えが思い出せないんです。
道蔦 それは当事者しか経験できない、貴重なものですよ(笑)。あと、中をちょっと暑くしたのは、実は番組側の演出です。
水津 そうだろうな。西村なんか、本当に汗びっしょりだったもの。