10日間で2人がクマにより殺され、食害されたという異常な事態

 以下は担当部署である北上市農業振興課園芸畜産係に私が電話で聞き取った内容である。

――8日のキノコ採りの方の人身事故を受けての対応は?

「現場周辺に注意喚起の看板を立て、市民に対してもホームページなどを通じてクマに対する注意を呼びかけました」

――箱罠(金属製の箱の奥にエサを置いて動物を誘い込み、扉を落として中に閉じ込める捕獲装置)の設置やハンターによる駆除ということは考えなかった?

「山狩りをしてまで駆除するということはしませんでした」

――8日の現場ではクマの体毛のサンプルが少なかった?

「私たちは現場までは入れませんので(サンプルは)警察の方から。結果的に比較できなかったということです」

――二つの事故を起こしたクマは同一個体ではないのか。

「その可能性は否定できませんが、特定には至らなかったということです」

――今後、瀬美温泉の事故について、事故報告書などは出るのか。

「事故の後に『北上市危機対策本部』から、お伝えすべき事実はメディア向けに発表しております。その一部は北上市のホームページに掲載されていますが、時間が経ってすでに掲載が終わっているものもあります」

 北上市の対応を糾弾するつもりはない。実際、山狩りには難しい地勢であったことはハンターも認めている。だが、10日間で2人がクマにより殺され、食害されたという異常な事態だっただけに、何らかの検証は必要だったのではないか。

クマ対策の「パフォーマンス」

「もはや自然災害ですよ。台風とか大雨と一緒です」

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 鶴山は昨今のクマ被害をそう表現した。

「瀬美温泉の事故だけじゃない。その年の7月にはやはり北上市で家の中にクマが侵入して、中にいた80代の女性を殺害するという事故も起きています。これまでの常識が通じない予測不可能な行動をとるクマが増えている。行政はそのことを認めたうえで、できる限りの事前の対策をすべきなんですが、その意識が薄いように思います」

ツキノワグマ ©時事通信社

 その一例として鶴山が挙げたのは、「防護用ヘルメット」である。

 クマによる攻撃は、人間の頭部への攻撃が6割とも言われ、ヘルメットがあれば、致命傷を防ぐことができる。

「だから、駆除に携わるハンターに対しては、行政がヘルメットを支給すべきだと思います。けれど市の担当者にそう言っても『手続きが、予算が』と言って話が全然進まないわけです。1個1500円ぐらいのものなんですけどね。結局、2025年のクマの大量出没が収まった後で支給されましたが、それまではウチの猟友会では自前で人数分のヘルメットを購入していました。バカな話だと思います」

 こんなこともあった。

 瀬美温泉のクマを駆除した後、北上市役所を通じて「市長を表敬訪問してほしい」という要請があった。ハンターのほとんどは、日中は本業の仕事をしている。