2016年、日本の獣害史に残る惨劇が起きた。『羆を撃つ』(文藝春秋)より、秋田県鹿角市で4人が死亡した「秋田・十和利山クマ襲撃事件」を紹介する。(全4回の3回目)
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5日間にわたって食害された
【3件目の事故(被害者は死亡)】
第三の犠牲者となった青森県十和田市在住のCさん(65・男性/当時、以下同)が、十和田大湯字田代平(たしろたい)にタケノコ採りに出かけたのは、5月25日早朝のことだった。
田代平は、Aさん、Bさんが襲われた熊取平の北東約2キロに位置する。
その日の夜になってもCさんが帰宅しなかったため、家族が捜索願を出したが、発見には至らず28日に捜索は中断する。
その翌日、Cさんの弟を含む捜索隊が組織され、Cさんのパジェロミニが止まっていた場所から笹ヤブに入ろうとした。すると高齢の女性が沢から上がってきて「クマだ、クマだ!」と叫んだ。以下はCさんの弟が米田に証言した内容である。
〈私らがどうしたと叫ぶと、大汗をかいたMさん(*高齢女性 引用者注)が軽トラの荷台に上がり、『息子がクマと闘っている。助けでケロ、皆で声を出してケロ』と叫んだので、皆が手を叩いたり軽トラをナタで叩いて声を張り上げた。(中略)沢の下で『やるなー、このやろう、やるかー、ばかやろー』と息子さんが繰り返し叫びっ放しだった。私が警察に電話をかけるとクマに手を出すなと言われた。30分ほどして息子さんが笹藪から顔を出して『助かった』と言ったが、顔じゅうでろでろに油汗をかいていた。(中略)『下に誰かのヘルメットとザックがある』とも言った。あっ、これで兄貴は死んでいる、と私は思った〉(『人狩り熊』)
この親子の証言によって、25日から行方不明になっていたCさんの所在が知れたのである。
翌30日、警察や消防などの捜索隊がCさんの遺体を発見する。
〈警官が『体の一部が食われていて見ない方がよい、誰だかも分からねえ。兄さんは、どこか体に特徴はないか』と言った。兄貴の右手の人差し指の爪は変形していて、人の目のように2つのコブになっている。それで兄貴だと分かった〉(同前)
Cさんの遺体は警察が白骨死体と見間違えたほど、著しく食害されていたという。
