2016年、日本の獣害史に残る惨劇が起きた。『羆を撃つ』(文藝春秋)より、秋田県鹿角市で4人が死亡した「秋田・十和利山クマ襲撃事件」を紹介する。(全4回の4回目)

秋田県内で民家近くに出没したクマ ©時事通信社

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クマの「土饅頭」

【5件目の事故(被害者は生還)】

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 5月29日7時45分ごろ、青森県新郷村在住のEさん(78・女性/当時、以下同)とその息子(50代)の2人がタケノコ採りで田代平(たしろたい)に入山。約1時間後に、Eさんはしゃがんでいたところを後ろから近付いてきたクマにいきなり臀部を噛まれた。Eさんはクマの頭部を蹴って逃げたが、息子は棒状のナタのようなもので応戦して撃退、クマに背中を見せずに後退(あとずさ)りし、逃走することに成功した。Eさんはクマの体長を120センチほどと証言している。

「その大きさだとすると、若グマから成獣になりたてぐらい。高齢女性の尻を噛むというクマらしくない非効率な攻撃方法を考えても、攻撃性が高いとはいえない」と米田。

 このEさん親子が、前述の被害者Cさんの弟らの捜索隊と出くわしたのだった。

【6件目の事故(被害者は死亡)】

 6月8日(もしくは7日)、青森県十和田市在住のFさん(74・女性)がタケノコ採りのため田代平に入山。9日になっても帰らず、家族が警察に捜索願を出す。同日、Fさんの車が発見される。10日朝から鹿角署員が捜索を開始。すると唸(うな)り声をあげて威嚇するクマと遭遇し、捜索隊は一時退避した。10時過ぎに秋田県警のヘリコプターが上空から捜索した際にも、子グマらしきクマを発見、ヘリが近づくとクマは熊取平方面に退避した。

 このヘリのローターの風圧で、笹ヤブがなぎ倒されたとき青いヤッケのようなものが見えた。

 10時38分にFさんの遺体を発見。遺体は食害され笹ヤブに埋められて、上から土をかぶせられていたという。

 クマには自分が獲物と認識した対象を埋め、上から土をかぶせる習性があり、これを「土饅頭(どまんじゅう)」と呼ぶ。そうやって自分の所有権を示すのである。