映画が終わった後、隣の席の女性はなかなか立ち上がろうとしなかった。映画をどう観たかと訊くと、「うーん、どうすればよかったのでしょうか。ご両親なりにお姉さんのことを愛していたことは確かですし、でも、保護するというのは統制も伴うものですから。難しい。実際にこの立場になったらどうするのでしょうねえ」と考え込んでいた。

藤野知明監督による著書『どうすればよかったか?』(文藝春秋)

専門家の見解は

 この映画への高い関心を、専門家はどう見たのか。カットゥンマウム(Like Minded)精神健康医学科医院のパク・ソンヒョン医師は、「この映画は、多くの人々がすでに経験してきたことに共感と慰めを与えたのではないか」と話す。

「実は、重度精神疾患患者を介護したり、ケアすることは思いのほか身近で普遍的な体験だからです。統合失調症だけでも100人に1人ほど存在し、双極性障害や重度のうつ病や発達障害などを合わせれば膨大な数になります。誰かが保護者や身内としてこうした患者に少なくとも一度は接したことがあり、ケアに関わった可能性がある確率は、実は非常に高いのです」

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 そして、こう続けた。

「保護者として患者と衝突したり、互いに傷つけ合ったりすることは日常茶飯事で、酷い場合は、患者からの暴力に晒されたり、患者の身体拘束や強制入院などを承認して見守らなければならない状況に直面します。これは情緒的に耐えられないことで、無条件に責めることなどできません。特に韓国と日本は、精神疾患を持つ個人の管理と保護が家族に大きく委ねられているという点で酷似していますから」

 統合失調症は、地域や文化圏に関係なく全体の0.5%~1.0%(約100人に1人)ほどといわれており、韓国には25万~50万人の患者がいると推定されている。この中で受診が確認されているのは約18万人(2024年「国家精神健康現状報告書」)。相当数の患者が診療を受けていない可能性があるとしている。ちなみに日本では約80万人の統合失調症患者がいると推計されている(厚生労働省「精神疾患の患者数」)。