「連ドラの時は、もう一人監督がいたんで」

 10月5日に放送された『FNS新ドラマ大集合!国民的ヒットの祭典!』(フジテレビ系)の中の「踊る大捜査線」特集コーナーで、主演の織田裕二が当時を振り返ってそう語った時、ファンの間ではずっと語られてきた「もうひとつの捜査線」に彼が触れたような気がした。

「澤田監督の時には、コメディをあまり求められなかったんですね。その代わり人間ドラマとかそっちの方が好きで、その人は。だからそっち側をすごく重点的にやってた思い出があります」

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織田裕二さん ©時事通信社

 織田裕二は番組スタッフに話を振られてその「もう一人」に触れたのではなく、「(今回の映画を撮った)本広克行監督の時はコメディはまったく心配ゼロ」という話に続ける形で、もう一人の監督、澤田鎌作について自ら話しはじめたようにVTRでは見える。

「水と油くらい違うタイプの監督がいたんで、だからあれくらい奥行きが広まったのかなと思います」

 この発言、この番組に限らず、今回の新作映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』のキャンペーンで主演俳優として織田裕二が作品を振り返る言葉は、どれも驚くほど理性的で的確だ。世界陸上の司会などではしばしば「語りすぎ、熱くなりすぎる」とネットで揶揄されたこともあった。だが今回の『踊る』キャンペーンで語る彼の言葉は、どんな批評家よりも的確に自分の代表作を分析し、整理しているように思えた。

「コメディと人間ドラマ、違うタイプの2人の監督が作品に奥行きを与えた」

 これほどシンプルで、かつ本質的な『踊る大捜査線』批評を主演俳優の口から聞くとは予想もしていなかった。

どれだけ批判されても、ファンが戻ってくる特殊なシリーズ

 日本映画史、日本ドラマ史の双方にとって、『踊る大捜査線』は極めて特殊な作品である。前掲の番組の中でも「連続ドラマを映画化するのは当時珍しかった」という歴史が語られていたが、その異例の映画化の興行収入が1作目101億円、2作目173.5億円という日本実写映画での日本記録(当時)を残した、という誰もが知る偉業も特筆すべきことではある。

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 だが不思議なのは、この成功によって人気ドラマの映画化が定番になり、『踊る』以上に視聴率の高いドラマが映画化されても、興行収入でこれほどの数字を出すことはなかったということだ。『GTO』や『ごくせん』、『HERO』といった、最高視聴率30%を超える人気作の劇場版は、視聴率計算上では『踊る』越えを期待して作られ、どれも商業的に大ヒットした。だが、視聴率が一度も30%を超えたことがない『踊る』映画の興行収入をこえる作品は、テレビドラマからはついに現れなかった。つまり『踊る』の劇場映画シリーズの成功には再現性がない、同じフジテレビのシステムをもってしても「2匹目のどじょう」を作れない特殊な作品だったのだ。

「それはきっと劇場版映画の出来が傑作続きだったのだろう」と考えるのは自然なことである。だが実際には、『踊る』の劇場版には公開されるたびに賛否が分かれ、一定の不満や批判が上がってきた。ファン全員が諸手をあげて「これこそ最高傑作、踊る大捜査線の真骨頂だ」と納得した劇場版は、歴代最高記録を残した2作目を含めて一本もなかったのではないかとすら思う。最新作、『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』も例外ではなく、過去に比べて大きく発展したSNSでは相当な批判が書きこまれている。