具材も実に個性的だ。全国的にはあまり聞き慣れない「丸天」は、魚のすり身を丸くして揚げたもの。いわゆる「さつま揚げ」のようなものだ。西日本や北海道、青森などでは魚のすり身を揚げたものを「天ぷら」と呼ぶ地域が多い。天ぷらを丸くしているから「丸天」なのだ。
その一方で、同じ福岡うどんの特徴的な具材である「ごぼう天(ごぼ天)」は、練り物ではなくごぼうに衣をつけて揚げたものを指す。またうどんの具材としては全国区である「海老天」も、海老に衣をつけて揚げたものだ。つまり、福岡うどんの「天ぷら」は、魚のすり身を揚げた練り物と、食材に衣をつけて揚げたものの両方を指すのだ。
ごぼう天は、ごぼうを細く切って揚げたものを乗せる店もあれば、かき揚げ状にする店もあるなど、店によって形はかなり違う。柔らかな麺に対する、ごぼうのシャキッとした歯応えと揚げた衣のサクッとした食感。丸天の弾力ある食感や甘辛く煮た肉の味わいも含めて、柔らかな麺を中心に、異なる食感の具材を配置している。これも福岡うどんの魅力であり特徴の一つだろう。
福岡うどんの麺
繰り返すが、福岡のうどんの麺は柔らかい。一般的な福岡のうどんは、茹で時間が讃岐うどんよりも長い。しっかりと芯まで茹で切ることで、独特の柔らかい食感を生み出している。しかし、商人の街である博多の人たちは、元来せっかちであると言われており、注文を受けてから30分も茹でているわけにはいかない。そこで、福岡のうどん店の中にはスピーディーに提供するために、あらかじめ茹でておいたものを温め直して出している店も少なくない。
これは博多ラーメンにも通じる考え方だ。博多ラーメンの麺が細くなったのは、長浜などの魚市場で働く人たちに素早く提供するためだと言われている。一般的なラーメンの麺が1分以上茹でるのに対して、博多ラーメンの極細麺は数十秒で提供できる。大盛りにすると茹で伸びしてしまうので、替え玉が生まれたとも言われている。福岡うどんの柔らかい麺と、博多ラーメンの硬い麺。どちらもせっかちな博多っ子のための工夫がされているのだ。
福岡のうどんは、讃岐うどんのように麺そのものの弾力や食感を楽しむ料理ではない。柔らかな麺と出汁を一体として味わう料理だ。そして麺が柔らかいからこそ、出汁との親和性も高くなる。柔らかな麺を口に入れると、麺そのものだけではなく、昆布やいりこ、かつお節、さば節などのうま味が一緒に広がる。これは福岡のうどんでなければなかなか体験できないだろう。


