外食業界の勢力図を揺るがす「福岡うどん」の東京侵攻が止まらない。投資ファンドからすかいらーくグループへと渡り、関東で記録的な大ヒットを飛ばす『資さんうどん』を筆頭に、11月には九州を代表する一大チェーン『ウエスト』が東京23区内へ初出店。さらに『一風堂』傘下となった『因幡うどん』の原宿進出や、堀江貴文氏による老舗買収まで、いま福岡の麺ビジネスに巨額の資本と注目が集まっている。讃岐一強だった市場に風穴を開けたのは、独自の成り立ちと徹底したローカル戦略だった――。三大チェーンの興亡から、急拡大する福岡うどんビジネスの深層を読み解く。

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福岡三大うどんチェーン

 福岡のうどん文化を語る上で、避けては通れないのがチェーン店の存在だ。『ウエスト』『牧のうどん』そして『資さんうどん』。福岡県の公式観光サイトでも「福岡の三大うどん店」として紹介されている。

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 しかし、この3ブランドはそれぞれ独自の成り立ちによって、福岡の人たちの生活に欠かせない存在となった。それぞれの強みや特徴が異なっているのだ。

11月に東京23区内へ進出する『ウエスト』

 1966年に創業した『ウエスト』は、ロードサイドのドライブインとして産声を上げた。当初は24時間営業のレストランや中華、焼肉など多角的な飲食ビジネスを展開していたが、昼のランチ需要を取り込むためにうどんの提供を開始した。

もっちりとした麺、小魚を使った優しい出汁、夜に開催される「うどん居酒屋」スタイルが愛される『ウエスト』

 1999年には出汁や麺、天ぷらの質を大幅に向上させる「うどん大改革」を実施したことで、現在の人気メニューが確立された。さらに、夜間に格安でもつ鍋などを提供する「うどん居酒屋」のスタイルを成功させたことで、九州を代表する一大チェーンへと成長。関東にも進出しており、今年11月には満を持して東京・神保町へ出店。東京23区へ初進出となる。

 『ウエスト』のごぼう天うどん

 またウエストは、うどん以外の業態も手広く展開している。蕎麦業態の『あずま』は関東でも展開を進めており、福岡県内では焼肉店や中華料理店なども手掛けている。福岡の人たちの日常に寄り添った外食チェーンという立ち位置だろう。

『牧のうどん』のうどんは「食べても減らない」

『牧のうどん』は、戦後に生まれた製麺所が前身だ。1973年に、製麺所のうどんを茹でたての釜揚げスタイルで提供する店として創業した。

福岡県民と出張、観光客がひっきりなしに訪れる『牧のうどん』博多バスターミナル店

 牧のうどんの最大の特徴は、麺が出汁を吸い続けることだ。丼の中で時間が経つほど麺が出汁を吸うため、卓上のやかんに入った出汁を自分で注ぎ足しながら食べる。福岡では「牧のうどんは食べても減らない」と言われるほど。これは初めて食べる人には、かなり不思議な体験だろう。

『牧のうどん』の肉うどん

 牧のうどんは福岡、佐賀、長崎にしか出店していない。それは厳格な「1時間半の掟」があるからだ。牧のうどんの命ともいえる出汁や主要な具材は、すべて糸島市にある加布里本店のスーププラントで一括して作られており、出汁の劣化を防ぎ、美味しい状態のまま配送車で運べる限界が「本店から片道1時間半以内」とされているのだ。

 九州北部でしか味わうことが出来ない。その稀少性が県内外に多くのファンを産み、福岡に来たら牧のうどんを食べる、という県外のファンも少なくない。